第23話 【閑話】マティス視点
「テルミス…この黄色いのは何かしら?」
そう聞いたのは、冬の社交が終わって領地に戻り子供たちの話を聞いていた時だった。
新しいお菓子を作ったと言い出されたのは、赤と青の可愛らしいチェックの布でラッピングされた黄色の何かだった。
プリンというらしい。
今手を伸ばしているのは赤のプリン
先に食べた青の布でラッピングされたプリンよりも黄色く、さらにしっとり濃厚なこれは…何かしら?
カラバッサだとテルミスが胸を張るが、これがあのカラバッサなの?
カラバッサって野菜じゃない!
美味しくて、食感も新しい、野菜を使うデザートなんて初めてだ!
これは…使える。
流行るわ…間違いない。
テルミスは既に販売計画があるようで、王都の貴族に高額で売りたいらしい。
最初の1年は完全受注生産制にすることで、初期費用を抑え、客の反応を探りつつ新商品の開発にするという。
料理人…いやパティシエは既に確保済み。
設備はタウンハウスにあるもので揃ってる。
あとは…お金周りや営業する人がいれば、すぐにでも始められるのがいいわね。
受注制だから、最初の1年は販売できる数は多くない。
けれど、それがかえっていい。
営業しながら、グランドオープンに向けて着実に準備ができる。
物質的にも、人的にも、お金的にも。
しかも販売数が多くないということは、希少性も高くなる。
いいこと尽くめじゃない!
最初テルミスの話を聞いた時はびっくりした。
6歳の子がお店をしたいと言ったのもびっくりだし、実際に誰に、どこで、どんなふうに、売るかを考えていた。
テルミスは、まだわからないことが多くてと恥ずかしそうにしてたが、何を恥ずかしく思うのだろう。
確かに価格や1日の販売数、実際のライバルとなるお菓子のリサーチなどなど細かな点は詰めれていなかったし、それゆえに本当に採算が取れるかわからない状態だ。
大人がしたプレゼンなら、こんな状態でよく話を持ってきたわね!と思うだろう。
でも、6歳でツテもなく、王都に行ったこともないテルミスにどうやってできる?
それにそれらが必要な情報だとはわかっていて、その点の助力も求めているのだから、それだけで優秀だと思う。
娘がライブラリアンだと知って、あの子の将来を悲観した。
けれどベルンと「あきらめない」と決意して、「ライブラリアンが使えないなんて、言わせない!私が娘を守るわ!ライブラリアンの価値高めてやる!」と思っていたけれど…娘は自分で切り開いていくみたい。
それなら母はそっと見守りましょう。
このプリンは間違いなく流行る。
絶対注目される。
この注目があの子にとって吉と出るか凶と出るか…
あの子を前に出すか、出さぬべきか…
ベルンと要相談ね。
それにしても…マリウスもまだ10歳だというのに、領地経営の勉強まで進んでいる。
領都の見回りもして、学んだことを実地体験している。
領地経営の勉強なんて在学中がほとんどで、卒業後からという人だってちらほらなのに。
え?うちの子たち優秀すぎない?
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