ライブラリアン〜本が読めるだけのスキルは無能ですか！？

第15話

じゃがいもパーティから帰ってきました。

汗まみれ泥まみれなので、さっと湯浴みをして魔法の勉強。

今日はパーティーに行きたかったので、スケジュールを色々ずらしてたの。

だから３０分だけ魔法の勉強したら、すぐさま算術ドリルをしようと思う。

今は４桁の四則演算。１０〜２０個の４桁の数字をどれだけ早く計算するか…時間を測ってタイムトライアル。

お陰様で難しい計算は無理だけど、簡単な計算はかなり速くなってきた。

計算力で大きな商店の事務とか…なれないかな？

流石に計算だけじゃ…無理か。

魔法の話に戻ろう。

魔法に関しては未だに魔力コントロールの練習ばかりしている。

血液のように魔力を全身に巡らせるのはできるようになった。

できるようになってからもウォーミングアップがてら巡らせているので、かなり早く、スムーズに体内で魔力を移動させられるようになった。

それに魔力をめぐらすと、体がぽかぽかして疲れが取れたような気がするのよね。

だから「疲れたー」って伸びをする感覚で巡らせてる。

つぎに魔力を自分の周りに放出するのもできるようになった。

自分がすっぽり入るくらいの球体状に魔力を放出するのだ。

これは放出する量がかなり多いから、魔力消費が凄くて疲れやすい。

すなわちできるようになってからはあまりやってない。

でもこの前久しぶりにやったら以前より疲れなくなってたのよね。

ちょっとした事だけど、成長を感じて嬉しくなった。

先日やっとできるようになったのが、魔力を範囲内にとどめること。

球体の時も、一応自分がイメージした球体より外に出ないようにするんだけど、球が大きいからそこまで難しくないの。

その範囲が狭くなると途端に難しい。

まず手に魔力を集めるでしょ？

すると手が燃えてるように手の周りに魔力がゆらめくのが普通なの。

それを手の内側に閉じ込める。

体表から１ミリも出さないように。

これがかなり難しくて。

ちょっと集中切らしただけですぐゆらゆら出てくるのだ。

それが右手でできるようになり、左手でできるようになり、足でもできるようになった。

そしたら、今までなんとなく心臓の辺りが白く光ってるなという感じで魔力が見えてだんだけど、その奥に魔力の源っていうのかな？魔力が出てくる球体状のものが見えるようになったの。

だから今日からはこの球の中に押し込める練習だ。

球の中心に魔力を集めるイメージで集中させる。

どんどん球の中に入ってきた。

お、意外に簡単かな？

そう思っていたら集まった魔力がまたふわふわ離散していく。

Ｎｏｏｏｏ！

難しかった。とても。

あのあと次の算術の時間まで何度やっても出来ず、魔力も切れそうになったので、魔法の練習は切り上げてチャイ休憩を取る。

やっぱり本が読めるだけのライブラリアンには魔法の素養がないんだろうな…

そもそも魔法の勉強してもライブラリアンってどうやってスキルアップ目指せばいいのかしらね。

最近私はよく厨房に遊びに行っている。

私の活動範囲は自室以外は庭と孤児院だけだったので、活動範囲が広がって地味に嬉しい。

ちなみに厨房通いのきっかけはじゃがいもパーティだ。

パーティの前にじゃがいも饅頭の皮を作れるように試行錯誤してたからだ。

料理人のラッシュは、初めての料理に興味津々でまた本で新しい料理を見たら教えてくれと頼まれてる。

この世界は（いや我が家だけなのかしら？）お茶会という社交場があるというのに、デザートはケーキ、クッキーばかりだし、ケーキも生クリームを使ったものでなくて、パウンドケーキ。

とても美味しい。

とても美味しいが、たまには…焼き菓子以外が食べたい。

思い立ったら吉日ということで、焼き菓子以外のお菓子が食べたい！そんな欲求に気づいた日から、夜寝る前の読書は、あらゆるデザートのレシピ本になった。

けれど読んでも読んでも、味が想像できずに食べたい気持ちにならなかった。

仕方ない。

なんとなくしか作り方はわからないが…作ってみよう。

厨房にて。

「プリンを作ろうと思います。」

「プリン…ですか？

どういうものでしょう？」

「卵と牛乳、砂糖を混ぜたものを石窯で蒸し焼きにするデザートですわ。

ただ、私詳細なレシピは知りませんの。

だから何度か失敗すると思うのですが、作るの手伝ってくださる？」

「そりゃ面白い。

ライブラリアンで読んだ情報ですか？」

「えぇ。でも詳しいレシピまでは載っていなかったの」

嘘だ。こちらの世界のレシピ本に載っているデザートは味が想像出来ず、作りたいと思わなかったのだ。

だからプリンは前世の知識。

詳しいレシピがわからないところを見ると、それほどお菓子作りは得意じゃなかったんだろうな。

「さて、何からしましょうか。」

「あとで焼きますから、ラッシュは石窯に火を入れてください。

使う材料は砂糖、牛乳、卵ですね。

分量が分からないので、まずは卵１個と牛乳１カップで作ってみましょ。

砂糖も…わからないからこのスプーンで５杯くらいから始めましょう」

私は、砂糖、牛乳を計量して、卵と一緒にボウルへ。

火をつけたラッシュが戻ってきて、泡立て器で混ぜる。

あらかた混ざったら濾し器で濾しながら、ココットへ。

小さめの器で４つできた。

お湯を張った天板の上にココットを並べて、いざ石窯へ！

工程だけは簡単だから出来そうな気がするのだけど…

ラッシュは火魔法使い。

石窯の管理はお手のものだ。

厨房に甘い香りが立ち込める。

ん〜いい匂い！

これはいい感じじゃない？

そう思っていたのだけど、結果としてはゆるゆるで、甘々。

失敗だ。

とろんとした食感と甘さにラッシュは衝撃を受けてたけど…まだ失敗だからね！

ゆるいのは…卵が少ないのかしら？それとももうちょっと焼けば大丈夫かな？

「ラッシュ。残りの３つをもう１０分焼いてみましょ。

焼き時間が少ないのかもしれないわ。」

しかし、１０分経って出てきたものはやっぱりゆるゆるだった。

「では、次は卵を増やしてみましょ。

甘かったから砂糖も３杯に減らして、焼き時間は最初と同じで。

もう一回。」

そして出てきたプリンは…ちゃんと固まってた！

「んんん！味は美味しい！

一応は成功かな。

でも、この表面のボコボコが食感と見た目を悪くしていますね…

本来は滑らかなはずです。

焼き過ぎか…それとも何か別の理由が…」

今日は急に厨房で試作を始めたからこれで終わりだ。

今から厨房は夕飯に向けて忙しくなるのだ。

「お嬢様！俺これ研究してみます。」とラッシュが言ってくれたので、一度任せることにした。

スが入ってボソボソしていたが、久しぶりのプリンに大満足だった。