第4話

勉強をがんばりつつ、お金を稼ぎ将来に備えると言っても、何からやったらいいものか…

6歳の子が商店立ち上げるわけにもいかないしね。

勉強だって何を学べばいいのやら…

とうんうん悩んだり、本を読んだりして、なんとなーく過ごしているうちに、ひと月経ってしまっていた。

時は金なりなのに!

もー私のばか!怠け者ー!

このままだと前世と同じように、なんとなく育って、なんとなく生を終えてしまうわ。

しかも今世はなんとなくしてたら、変態爺行きになっちゃうかもしれないのに!

勉強だとか、金稼ぎなんて言っている場合ではないわ。

まずはこの怠けきった性根をなんとかしないと…

スケジュール立てて、タスクをいっぱい詰め込んで、ダラダラ生活から脱出よ。

平民になる可能性もあるのよね?

掃除や洗濯のお手伝いしようかしら。

予行演習にもなるし、掃除と洗濯は一仕事だもの。

体力もきっとつくわ。

あとは…文字もスラスラと読めるようにならないと。

中身は大人だけど、この国の言語は前世と違ったから6歳のテルミス並みの速さでしか読めない。

ライブラリアンにあった絵本を音読しよう。

あとは、あとは…

「お嬢様、どうかなさったのですか?」

私が机に向かってうんうん唸っていると、メリンダが声をかけてきた。

そうよ!メリンダに手伝ってもらえないかしら?

怠け者の私のこと。

今日一生懸命スケジュールを決めたところで、3日坊主になってしまうわ。

できてない時に注意してくれる人がいないと…私1人では無理だわ。

情け無いけど、意志の力でどうにかできるものではないのよ。

私の怠けパワーは。

「メリンダ。あのね。お願いがあるの。

私のスキルのことは知っているでしょう。

将来何になるかはわからないけれど、知識は裏切らないから勉強頑張ろうと思うの。」

「それはいいことですね。お嬢様」

「でもね…ちょっと問題があって。」

「問題?」

「あのね…あの…わたしとっても怠け者なのよ。

最初はやるぞー!ってやる気もあるんだけど、途中でめんどくさくなって、怠けちゃうの。

今日くらいいいか。とおやすみしたら、今日もまぁいいかになって、明日こそやろう。明日からやろう。って言い訳しながら、サボっちゃうの。」

「ふふふ。お嬢様は6歳ですもの。

完璧にできなくて当たり前ですわ。

大人だって、仕事として決められていることはみんなちゃんとしていますけど、自分で自分の成長のために努力を重ねられる人は少ないのです。」

「私は大人になって後悔するのは嫌なの。

もっと努力していればよかったって。

だからメリンダ。

あなたも忙しいのに悪いのだけど、私を監督してくれないかな?」

「もちろんです。朝はお嬢様の身支度の他に掃除メイドと厨房も手伝いしていますので、ちょっとバタバタしておりますが、それ以降でしたら比較的時間も取れますので協力できると思います。」

「ありがとう!」


メリンダが手伝ってくれるというので、メリンダに今考えているスケジュールを見せてみた。

「まぁもうこんなに考えられて!」と言っていたメリンダの顔が少し曇る。

「お嬢様。

この計画のお手伝いをするのであれば、私の意見も言わせていただいて良いですか。」

「もちろんよ。

これはまだ叩き台だから、あなたの都合も考えられてないし。

あなたの他の業務との兼ね合いもまた微調整しましょう。

気づいたことがあったらなんでも言ってちょうだい」

「私の都合も考えてくださりありがとうございます。

業務の都合はつけられるでしょう。

けれど、このスケジュールをするなら私は手伝いたくありません。」

「え?え?」

「確かにお勉強は大事なことです。

けれどまだお嬢様は6歳なのです。

こんなに詰め込んでしまったら、過労で倒れてしまいます。

それに私はお嬢様に未来だけではなく"今も"幸せでいてほしいのです。

朝から晩まで勉強と労働で楽しいでしょうか。

それに、小さい頃遊んだ事が大人になって生きることだってあります。

遊びの中から将来を見出すことだってあるのです。

お嬢様は何がお好きですか?やりたいことはございますか?」

?なにがしたい?

お父様から話を聞いて、

無知なら教えを乞えばいいと人生の道筋を教えてもらって、

その中から無難な方向に進もうとしているだけだ。

何がしたいとか…考えたこともなかった。

「わたしは…何がしたいか分かりません。

でも領主の娘として、領地のための政略結婚も満足に果たせない私がしたいことなどしていいのかしら。

役立たずのくせに好き勝手して領民も迷惑でしょう?」

「お嬢様。

領民を1番に考えられるのは、とても立派なことでございます。

しかし、人は自分に余裕がないと人のことを考えられないものなのです。

つまりお嬢様が幸せになって初めて、お嬢様は本当の意味で周りの人に手を差し伸べられるのです。

きっとあるはずです。

お嬢様の幸せを捨てずに領地に貢献する方法が。

幸いまだお嬢様が大人になるまでに時間はたっぷりあるのですから、探してみましょう。」

「はい。

ごめんなさい。

私ちょっと視野が狭かったみたい。

それに自意識過剰だったわね。恥ずかしいわ。

これからも私が道を逸れたら、道に戻してくれる?」

「もちろんでございます。

私の力の及ぶ限りは、お嬢様のサポートさせていただきます。

それに、恥ずかしく思うことなど何もありませんよ。

何度も言いますが、お嬢様はまだ6歳なのですから。

本当はよく食べ、よく動き、よく眠りさえすれば、何も考えず、楽しく暮らしていい年頃なんですからね。」

その後私とメリンダは話し合い、子どもらしく自由な時間を設けつつ、勉強は午前と午後に1時間半ずつすることにして、午後のお茶の後は今日勉強したところをメリンダに話すことにした。

後の時間はフリータイムだ。

「メリンダもう一つお願いがあって。

平民になる可能性もあるのだから、家事もできるようになりたいの。

まずはこの部屋の掃除とか…ダメかな?」

最初はびっくりしてお嬢様がしなくても…と言っていたメリンダも納得し朝の勉強前に部屋の掃除をすることが決まった。

前世ではメイドなんていなかったのだもの。

できるよね?きっと。

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