第4話:なに?この原付。

で、私がカフェにいないもんだから、伊奈ちゃんから私のスマホに連絡が入った。


「柑菜?・・・今どこにいるの?」


「ごめん・・・今、私の家にいるの」


「家?・・・なんで?」


「ごめん・・・これには深いわけが・・・」

「あのね・・・私、カフェで知らない男の人に声かけられて・・・」


カフェで起きた出来事を伊奈ちゃんに一応説明だけした。

伊奈ちゃんはスマホの前で?だったと思う。


まあ今度会った時、ちゃんと説明しよう。


ってことで次の朝、私は二階の部屋から降りて来ると、すでに光人は

キッチンテーブルの椅子に座って、お母さんと何か楽しげに話していた。


「おはよう、お母さん・・・おはよう光人」


「おはよう柑菜さん」


素敵すぎる笑顔で光人はそう言った。


「おはよう柑菜」


「なんだか光人は、ずっと前から私の家にいるみたいに思えた。


私は光人と一緒に朝食を食べて普通にしゃべって・・・。

これが普通になっちゃうの?

どうしたもんかなって思うよね、勝手に好きになられちゃって・・・。


光人のことは嫌いじゃないけど、まだ恋愛感情は持てない。

でも彼の好感度は私の中では上がってる。

かといって友達ってのも・・・微妙・・・恋人未満・・・ってのも微妙。


光人の私への気遣いはまるで私だけのためにいる執事さんみたい。

あんなに私を気遣ってくれて一生懸命に自分をアピールされると気持ちが

光人になびいてしまいそう。


それになんてったってイケメンだし・・・そこはねいいけどね。

いきなり魔法とか使っちゃっても困るけど・・・。


「じゃあ、お母さん私、会社に行ってくるから・・・」

「いってらっしゃい・・・気をつけてね、柑菜」


「光人・・・行ってきます、お母さん頼むわね」


「お気をつけて、柑菜さん」


光人は玄関の外まで、私を見送ってくれた。

で、車庫から出した原付を見て、私は固まった・・・ってかビビっちゃった。


原付に昆虫の羽みたいなモノが生えてるし・・・。

まるでバカでかいセミみたい。


「なにこれ?・・・」


「それでブーンって、空飛んでいけますから・・・」


「はあ?、なに言ってるの・・・」

「なにこのデカい昆虫の羽みたいの、キモい・・・」


「羽をつけておきましたから・・・だからそれに乗って会社に行けば楽でしょ」


「そういう問題の以前に、こんなの乗れるわけないでしょ」

「乗ったこともないモノにどうやって乗れって言うの・・・」

「それに万が一乗れたとしてもこんなので会社に降りたりしたらみんなビビる

でしょ」


「この世界のどこ探したって空を飛べるスクーターなんかないの・・・」

「ありえないからね・・・」

「元にもどして・・・普通に行くから」


「いいアイデアだと思ったんですけどね」


「だから・・・勝手に魔法使っちゃダメだよ」


「分かりました・・・よかれと思ったことでも逆効果になることもあるんですね」


そう言うと光人はなにか呪文を唱えて原付をひょひょいと元に戻してくれた。


「余計なことはしないの・・・分かった?」

「まあ、私のためを思ってしてくれたってのは感謝だし嬉しいけど・・・」


「お母さんの前でもやたら魔法使っちゃダメだよ」

「じゃあ、行ってくるからね」


「お気をつけて・・・あとで私も会社にお伺いしますから・・・」


「なに言ってるの・・・来なくていいって・・・絶対来ちゃダメだからね」

「分かった?」


「確約はできません・・・私がついていないと柑菜さんが心配ですから・・・」


「んもう〜・・・過保護すぎるよ」

「会社遅れちゃうから行くよ・・・」

「来ないでよ・・・来ても他人のフリするからね・・・」


なに言ってるんだろ、私・・・んなこと言っちゃって・・・光人のこと

身内だと思ってる・・・彼とは、まだまるっきりの他人だからね・・・。


「安全運転で・・・柑菜さん」


「分かってるわよ」


つづく。


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