第4話 家族


 そのあと、家族で夕飯を食べた。

 今日から僕たちこの4人が新しい家族なんだ。そう思うと、なんだか感慨ぶかいな。

 今まで母さんが死んでから、父さんもどこか元気なかったからな。

 これで、父さんもちょっとは元気になるといいけど。

 ただ、やっぱり心配なのは……彩音のことだよなぁ……。

 なんで僕のことそんなに弟扱いしたいのか、よくわからないけど……。どうなることやら。

 とりあえず、僕は不安でいっぱいだった。


 夕食後、僕はリビングのソファに座って、映画を見ていた。

 金曜ロードショーでやってる、ゾンビもののホラー映画だ。

 すると、そこに風呂上りの彩音がやってきた。

 うお……女子の私服パジャマ……パネェ。めっちゃかわいい。

 あれだ、もこもこで可愛い感じの、有名なブランドのやつだ。

 しかも、シャンプーの臭いなのか、ちょっと離れててもめっちゃいい匂いする。


 彩音は僕の横に座ってきて、いっしょにテレビを見始めた。

 だけど、どこか退屈そうだ。

 もしかして、他にみたい番組とかあるのかな。

 だったら、悪いな。


「あの、もしよかったらチャンネル変えようか? なにかみたいのある?」


 僕はそういい、彩音にリモコンを手渡す。

 だが、


「ううん、弟君のみたいものでいいよ。私はお姉ちゃんだから、なんでも我慢できるの。それに、とくにみたいものもないしね。もっと弟くんのこと知りたいから、お姉ちゃんは弟くんが見たいものが見たいなぁ」

「そ、そう……」


 潤んだ目でこっちをみてくる彩音。くそぅ……弟扱いが慣れない。しかも、無駄にかわいいからさ、ほんと調子狂うなぁ……。

 そのまま僕たちは、しばらく一緒にゾンビ映画を見ていた。


 すると、ちょっとグロテスクなシーンになって、びっくりするような演出が入った。

 その瞬間、


「きゃあ!」


 そう声をあげて、彩音が僕に抱き着いてきた。


「ふえええええ……!!?!?」

「ご、ごめん……おねえちゃんなのに……。弟くんをまもらなきゃなのに、お姉ちゃんが怖がってちゃいけないよね……」

「いやそういうことじゃなく」

「弟君も、怖かったらいつでもお姉ちゃんに抱き着いてきていいからね?」

「いや抱き着かないよ……」


 まったく、心臓が止まるかと思った。お風呂上りの女子に抱き着かれて、甘い臭いで脳みそが焼き切れるかと思ったよ。しかもパジャマはちょっと薄いし露出もあって、心臓に悪い。ふとももとかめっちゃ見えてるし。


 そのまましばらくまたテレビをみていると、今度は彩音が僕の手をそっと握ってきた。


「もしかして……怖いの……?」

「うぇ……!? こ、怖くなんかないよ……!? お姉ちゃんだもん! その……もしかしたら弟くんが怖がってるかなぁって。ね? お姉ちゃんが手を握っててあげるからね」

「うん、怖いんだね……」


 まあ、手くらいなら大人しく握られててもいいか……。

 そのまま、映画はクライマックスになって、終わった。

 はぁ、そろそろ眠くなってきたなぁ……。


「じゃあ、僕ねるから、おやすみ」

「あ、うん。じゃあお姉ちゃんも寝るね」


 そういって、僕たちは二階の自室にいく。

 たしか、僕の部屋の横の空き部屋を、彩音の自室として使うはずだ。

 違う部屋とはいえ、壁一枚隔てた向こうに、一つ屋根の下に、好きな女子が寝てるなんて……想像するだけでどうにかなりそうだ……。


 二人で階段を上がって、お互いの部屋に、行くのかと思いきや……。

 なぜか、彩音は僕の部屋について入ってきた。


「え……? あの、彩音おねえちゃん? なんで僕の部屋に?」

「だって、弟くん今から寝るんでしょう?」

「そ、そうですけど……」

「だったら、お姉ちゃんが寝かしつけてあげないと。でしょ? 姉弟って、そういうものでしょ?」

「いや、違うと思います……」


 マジか……この人どこまでブラコンやりたいんだ。

 寝かしつけまでしてくるとは……。


「と、とにかく……僕は一人で寝られるから、出て行って」

「あ、ちょっと……だめだめ。お姉ちゃんが一緒に寝てあげるから」

「寝かしつけじゃなくて!? なんで一緒に寝ることになってんの!?」

「だ、だってぇ……」


 僕は彩音をなんとか部屋に帰らせようとする。

 そのときだった。僕が彩音の肩に触れると、彩音の身体が震えているのがわかった。

 もしかして、さっきの映画が怖かったのか……?


「あの……もしかして一人で寝るのが怖いの?」

「ひぃ……!? こ、ここここ怖くなんかないもん! 私お姉ちゃんだから、弟くんがいなくても寝られるもん……!」

「あ、怖いんだ……」

「怖くないもん!」

「じゃあ、眠たくなるまでUNOでもしてあげるから、それで勘弁ねがえない?」

「うーん、弟くんが怖いんなら、UNO付き合ってあげる」

「もう、それでいいです……」


 ということで、僕たちは眠気がくるまでUNOをすることにした。

 1時間ほどすると、彩音がうとうとしてきたので、これはチャンスだと思い、部屋に無理やり帰らせた。

 はぁ……なんか激しい一日だった……。

 いつまでこの姉弟ごっこは続くのだろうか……。


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