第53話
「ソフィ!」
「え……? マ、マリーナさん!?」
マリーナは起きたばかりのソフィアをぎゅっと抱きしめた。ソフィアはいきなり抱きしめられてビックリした様子だったけど、次第に安堵した表情になり、ソフィアもマリーナに抱きついた。
「ソフィ……! あぁ、本当に良く無事で……!」
「マリーナさん……うん……うん……で、でも……」
ソフィアは安堵した表情をしていたが、でもすぐに悲しそうな表情に変わっていった。
「で、でも……お母さんもお父さんも……お兄ちゃんも……み、みんな……」
「いいんだよ、そんな事言わなくても。きっと皆も、ソフィが無事に生きていてくれて喜んでいるはずだからさ」
「……うん……うん……」
悲しそうな顔をしているソフィアの事をマリーナは優しくずっと抱きしめてあげていた。
「とりあえずさ、疲れてるだろうし今はゆっくり休みなよ。そういえば体はどう? 痛い所とかある?」
「え? あ、う、ううん、多分大丈夫……かな」
「そうか、うん、それなら良かったよ」
「あ……これってマリーナさんが治してくれたんだね。ありがとう……」
「ははは、別にいいんだよ、そんなこと。それにこんな時のために私は治癒士をやってたようなもんだからさ。うん、でも本当に……本当に無事で良かったよ、ソフィ……」
そう言うマリーナの瞳にはうっすらと涙を浮かべていた。
そしてそんなソフィアとマリーナのやり取りを見ていて私も泣きそうになった。ここに到着するまでに何度も危険な目に合ってきたけど、それでも無事にここまで辿りつけて本当に良かった。
「あ、あれ? でもちょっと待って、それじゃあここって……ヤウスなの?」
「あぁ、うん、そうだよ、ステラがソフィをここまで連れてきたんだよ」
「え……? あっ……」
ソフィアはマリーナから体を離して私の方を見てくれた。私がいる事に今気づいたようだったので、私はソフィアに向けてニコっと笑ってあげた。
「うん、ソフィアが無事で良かったよ」
「あぁ……本当に……本当にありがとう。君には何度も助けてもらっちゃって……」
「そんなのいいよ、全然気にしないでさ」
私は顔を横に振りながら、ソフィアにそう言ってあげた。
「……うん、あ、そういえば……この屋敷には迷わず辿り着けた? 途中で気を失っちゃってごめんね」
ソフィアは私にこの屋敷の位置を大雑把に告げてからすぐ気を失ってしまったので、目を覚ましてマリーナの屋敷にいる事が何となく不思議な様子だった。
「え? あぁ、えっと、ううん、私も一回だけどヤウスに来た事があったから迷わずに辿り着けたよ」
「あ、そうなんだ。うん、それなら良かった……」
正確には来た事があるわけじゃなくて夢の中で見た光景だったんだけど……でもそれを伝えても信じて貰えないだろうし、私はそれっぽい理由をつけてはぐらかす事にした。
◇◇◇◇
「……よし、ソフィも目を覚ました事だし、ちょっと正門の様子見てくるね。例の件も伝えに行かなきゃだしさ」
「え……あ! す、すいません」
目を覚ましたソフィアの事を一通り調べ終えたマリーナは、そう言って椅子から立ち上がった。マリーナは私達が無理矢理正門を通った事の説明をしに行ってくれるようだ。
「ふふ、大丈夫だよ。理由だってちゃんとあるんだし、誰も怒りはしないよ。まぁすぐに帰ってくるからさ、それまでソフィの話し相手にでもなってあげてね」
「は、はい、わかりました」
マリーナはそう言って屋敷から出ていった。
という事で今この部屋には私とソフィアの2人だけになった。すると、ソフィアの方から私に喋りかけてきた。
「……本当にありがとう。ずっと私の事を運んでくれてたんだよね。えっと、ステラは怪我とか大丈夫だったの? 見た所、片腕を怪我してるようだけど……」
「え? あぁ、うん、全然大丈夫だよ。ほら、私って結構頑丈だからさ」
私はそう言いながら怪我をしてない片腕を腰に手を当てて、えへんと、わざとらしく偉そうなポーズをしてみた。それは精霊の湖でソフィアを安心させるためにやった行動だった。
ソフィアもそれを覚えていたみたいで、そんな私の姿を見て笑ってくれた。
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