第41話(ソフィア視点⑨)
「……ふふ、良い事思いついちゃった……ねぇねぇ? 妹ちゃんはさ、アタシの事が怖くないんだよね? それって本当に本心なんだよね? 私、嘘も嫌いなんだよ? だからさ、本当に怖くないのか試してみてもいい?」
「……ぐ、ぐっ……えっ……?」
蛇の化物はそう言った瞬間、自身の尻尾を私の首から離した。いきなり首を締めるのを止めた理由がわからず私は困惑した。でもその後すぐに蛇の化物は私の頭を両手で思いっきり掴みだした。
「うがっ……!」
「さぁさぁ、それじゃあ妹ちゃんが本当に怖くないのか試させて貰うねぇ?? ぷははは!」
蛇の化物はそう言って私の瞳を見つめてきた。そして……。
「
―― パキッ……パキッ……
「……えっ……な……なに……これ……?」
蛇の化物がそう唱えると……私の足がゆっくりと石に変わっていっていた。
「ふふふ、当たり前だけどさぁ……私の石化って他人にもかけれるんだよ? だからさ、妹ちゃんにはそこら辺のクズ石になる石化をかけてあげたよ。うーん、でもあれだね? 妹ちゃんって魔法適正がそれなりに高いんだねぇ……本当ならもっと早く石化するはずなんだけどなー」
そう言って化物は石化した私の足を見て羨ましそうな顔を見せてきた。
「アタシ魔法適正そんなに無いから妹ちゃんが羨ましいなぁ。でも逆にそんなにゆっくり石化していくと怖そうだけどね……って、あぁ、でも妹ちゃんは怖くないんだもんね? ふふ、それなら本当に良かったよ。まぁ口と鼻が石化するまではちゃんと生きれると思うから……ふふ、それまでノンビリと余生を楽しみなよ?」
「あ……あぁ……」
―― パキッ……パキッ……
「はぁ、それにしても今日は疲れちゃったなぁ……いや実はこの石化技って一日に何度も使えない大技なんだよねー。あーあ、だから今日は二回もこれ使ったから本当に疲れたわ……」
「あ……や……だ……身体……が……」
―― パキッ……パキッ……
徐々に私の足が石になっていく恐怖心が、私の顔に出てしまった。恐怖から出る声も口から出してしまった。
「んー? ふふ、なぁんだ、妹ちゃんもそういう顔出来るんだね。まぁ今更どうでもいいわけどね、もうアンタに興味無いし、1人で勝手に死ねば? それじゃあアタシ疲れたから帰って寝るわ。ばいばい」
蛇の化物はそう言って、私の頭から両手を離した。そしてそのまま私に背を向けて森の茂みへ向かおうとした。
「……あ、そうそう。妹ちゃんはこのまま全身石になったら当然死ぬわけだけどさ?」
化物は森から出ていく前に一旦立ち止まり、最後にもう一度だけ振り返ってきた。
「私の部下にさぁ……鉱石が主食の魔族がいるんだよね。
「……え?」
蛇の化物はニヤニヤと笑いながらそう言ってきた。でも私にはもう興味が無いようで、私の事は一切見ようとはしてこなかった。
「それでさ、アタシはもう妹ちゃんになんて興味は一切無いからさ、その代わりにガー君をここに呼んできてあげるよ! きっとガー君も人間との戦闘ばっかりでお腹が空いてるだろうしね。ふふ、それに妹ちゃんってさぁ……なんか食べたらすっごく美味しそうだよねぇ?」
「……っ!? そ、それって……」
この化物は恐ろしい提案をしてきている。
「ねぇねぇ、妹ちゃんさぁ? 生きたまま何も抵抗できずに食べられちゃうのって……ふふ、どんな感じなんだろうね? やっぱり痛いのかな? それとも石になったらもう痛覚って無くなっちゃうのかな? ねぇねぇ、どうだと思う? 食べられちゃう時の感想とか今度会ったら教えて欲しいな! あぁでも……」
蛇の化物はそこまで言ってから一息つき、私の事をチラっと見てきた。そして今までで一番最低に下卑た笑みをこちらに向けてきた。
「そん時にはもう死んじゃってるか! あははははっ!」
蛇の化物はそう笑いながら、私を1人残して森から出ていった。
◇◇◇◇
蛇の化物が森から出ていってどれくらい経ったのか……私にはもうわからない。石化の影響なのか、意識がどんどんと遠のいていっていた。
身体の下半身は全て石になってしまい……今は胸の下辺りまで石化が進行していた。下半身の感覚はだいぶ前から無くなっていた。
もう私は助からない。このまま全身が石化して死ぬか、化物に食べられて死ぬかのどちらかを待つ状況だ。でも意識が朦朧としていて……怖いとかそういう感情はもう芽生えなくなっていた。
(……だい……じょうぶ……か、な……あの、こ……は……)
意識が朦朧となっていて考える事はもうあまり出来なかったけど、それでも最後に私はあの子の事を気にかけた。
(……あの、この……こと……まもって……あげて、ね……おにい……ちゃん……)
私は彼女に渡した首飾りに祈った。どうかあの子が無事にこの地獄から抜けられますようにと。
―― ガサ……ガサ……ガサ……
その時、森の茂みから草を掻きわける音が聞こえてきた。何かがこちらに来ていた。
「グルルルルル!」
森の茂みから現れたのは、悪魔のような見た目をした化物だった。そしてその化物は全身が石で出来ているようだった。さっき蛇の化物が言ってたガーゴイルとはコイツの事だと思った。
私はガーゴイルと目が合ってしまった。体の半分以上が石になっている私の事を見てニヤニヤと嗤っていた。口からは涎も垂らしている。
(あぁ……わたしを……たべる……つもり……なん、だ……)
ガーゴイルはどんどんと私に近づいてきている。でも私にはどうすることも出来ない。足は石化してしまって動く事は出来ない。それに頭がどんどんと真っ白になってきてて、もうまともに考える事すら出来ないていない……。
(あぁ……どうせ……しぬなら……いたくない……と……いい、な……)
「グギャルルルル! グガアアアア!!」
近づいてきたガーゴイルは私の目の前で止まり、そしてそのまま口を大きく広げた。私は自分の死を悟り、ゆっくりと目を瞑った。
―― ……ズドンッ! グシャッ!!
その瞬間、大きな音が辺りに鳴り響いた。
私は石化している自分の体が砕けた音だと思った。でも違った、だって私の意識はまだある。それに痛みも無かったから。
「グギャァァァァアァァアァア!」
続いてすぐに聞こえたのは叫び声だった。それは……私を食べようとしていたガーゴイルの叫び声だった。
―― 間に合った……
「……え……?」
声はしなかったんだけど……でも何故かそんな言葉が聞こえた気がした。
「お、にい……ちゃん……?」
それは天国にいる兄の声がしたのかと思った。でも違う。だってその声は女の子だったから。
いや実際に声は聞こえなかったのだけど……それでも何故か……私には女の子の声が私には聞こえた気がしたんだ。
私は朦朧としながらも、ゆっくりと目を開けた。
「……あ、れ……?」
私の目の前にいたはずのガーゴイルがいなくなっていた。
ガーゴイルは私から少し離れた場所で崩れ倒れていた。石で出来ていた体が粉々に崩れていた。何かとても強い力で吹き飛ばされたようだった。
「……あ……」
私の目の前にはとある人物が立っていた……その人物は……いや、その子は……私の姿を見た瞬間に泣きそうな顔をしていた。
「……な……ん、で……?」
そこにはローブを羽織った女の子が……私の前に立っていたのだった。
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