第23話

「そしてもう1つはさぁ……ふふ、アンタがその首に身に付けてる宝石だよ」


 アタシはその男が身に着けていた首飾りを指さした。


「凄いよねぇ……石っころをこんな綺麗にする技術はアタシ達持ってないから羨ましいよ、ふふ……」


 そう言いながらアタシはその首飾りに付いている宝石を指で弄っていた。男は何か言いたそうな様子だったのだけど、でももう喋れる状態では無かった。


「だからさぁ……どうせアンタもう死ぬんだし……その首飾り……アタシが貰っとくね?」

「……ぁがっ……ぐっ……!」


 そう言い終えるとアタシは尻尾を更に高くまで持ち上げた。男は自重によってさらに首が絞まり、酷く悶え苦しんでいた。真っ赤になっていた顔はどんどんと膨れ上がっていった。


「ふふ、それじゃあね……って、あ、忘れてた、その妹ちゃんとやらも近い内あの世に行くだろうからさ、そっちでも仲良くしてあげてね」

「……ぇ……ぁっ……」


―― ゴキンッ!


 アタシはそう言い終えるとすぐに尻尾の力を一気に込めその男の首をねじり切った。男の首はぽとんと虚しく地面に落ちていった。そしてアタシはそのまま動かなくなった“男だった物”をテキトーに放り投げた。


 その時、アタシの尻尾にはその男の返り血がピシっとかかってしまったけど気にはしていない。そんな事よりも……。


「ふ、ふふ……ふふふ……!」


 アタシは地面に落ちてしまった先ほどの首飾りを尻尾で拾い上げた。


「ふふふっ、これこれこの輝き! 宝石を作り出す技術だけは本当に凄いと認めるわぁ……って、あら……?」


 しかし首飾りの宝石部分に血が付いてしまっていた。アタシはそれに気が付いてほんのちょっとだけ苛ついてしまった。


「……まぁ仕事はそれなりにやったし、もういいでしょ。そんな事よりも早くこれを綺麗にしなきゃ。えぇっと、確か……森の中に川が流れてたよね」


 アタシはもうこの戦争への興味を一切失くしていた。そんな事よりもアタシはこの首飾りを早く綺麗にしなきゃいけないんだ。という事でアタシは近くの森の中に入って、その中にある川を目指す事にした。


◇◇◇◇


 それなりに時間はかかったけど、何とか森の中を流れている川にたどり着くことが出来た。アタシはその川の前にまで進んでいき、そしてもう一度その首飾りを空に掲げながら見つめてみた。


「ふふ、凄い綺麗な色」


 その首飾りを見つめ終えたアタシは、その首飾りを川の流れる水に入れ付着していた血を洗い流した。あとは自身の体にも返り血はついているけどこっちは別に気にしない。どうせすぐに血が付く事になるしさ。


「……うん?」


 その時、森の中の川で首飾りを洗っていると“誰かに”見られているような気配がした。でも辺りを見てみたけど誰もいない。川から流れる水の音と、遠くの方から滝の音が聞こえるくらいだ。


「……うーん、気のせいかなぁ?」


 アタシはそう思う事にして、洗い終えた首飾りをもう一度見つめ直してみた。


「ふふ……本当に綺麗な宝石ね……」


 アタシは綺麗にした首飾りをそのまま自分の首に付けてみた。うん、こんな綺麗な首飾りはあんな男よりもアタシの方が似合うに決まってるよね。


 それにしてもやっぱり宝石って凄い。綺麗な石っころはアタシも集めたりするけどさ、でもそれをこんな綺麗に加工する技術があるのは本当に凄いと思う。


「……あ、そういえば……」


 そういえばさっきの男さ、殺す前になにか面白そうな事を言ってたよね? えぇっと、確か……。


「確かあの男には妹がいるって言ってたけど……ふふ、もしかしてそいつも宝石を持ってるんじゃないのかしら……?」


 もしもこんな綺麗な首飾りをもう一つ手に入れる事が出来るとしたら……ふふ……。


「……ふふ、そうだよね……お兄ちゃんとも約束しちゃったもんね。だから妹ちゃんもそっちに早く連れて行ってあげないと可哀そうだよね……ふふ、それじゃあ待っててあげてね、お兄ちゃん……ふふっ」


 アタシは最高の笑みを浮かべながら、アタシが先ほどまでいた街道の方へと戻っていった。

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