第22話(アイシャ視点)
―― ビシッ!!
アタシは欠伸をしながら自分の尻尾をムチのようにしならせ……その男が持っている剣の手元に尻尾を叩きつけた。
「うぐっ……」
男は苦悶の表情を浮かべ、剣を離して地面に落としてしまった。アタシはその隙をついて、無防備になったその男の首元にめがけて尻尾を巻きつけた。
(おっと……危ない危ない、ふふふ……)
でもその男が身に着けていた首飾りは壊さないように喉元より上側を狙って巻きついた。せっかくアタシに似合いそうな綺麗な首飾りなんだからさぁ、絶対に壊すわけにはいかないよねぇ、ふふふ。
「ふんふんふ~ん♪」
「ぐ、が、ぎっ………」
もうすぐその首飾りが手に入ると思うとアタシはウキウキとした気持ちで尻尾を上へと持ち上げていった。そしてその男の足は地面を離れてしまい、宙を浮いた状態になっていた。 とても苦しそうな顔を浮かべている。
「あ……がっ……」
「……ふふっ」
男はアタシの尻尾を掴んで離れようと必死に足掻いているけど、でも抜け出せる事も出来ずにどんどんと男の顔が真っ赤になっていった。アタシはそんな様子を見てニヤニヤと笑ってしまった。
「ねぇねぇ、もうすぐアンタは死ぬわけだけどさぁ、今は一体どんな気持ちなのかな? ちょっとアタシに教えてみてよぉ……くすくす」
アタシはニコニコ顔のままその男に聞いてみた。首を締められているその男は苦渋そうな顔を浮かべていた。
「だ……す、げ……ぐっ……」
かすれた声で男は助けを求めてきた。
「……っぶ……あは、あはは!」
そのかすれ声を聞いてアタシは吹き出さずにはいられなかった。
「あーっはっはっははははははは!」
先ほどまで凄いイライラしていたんだけど、面白いオモチャを見つけたアタシはそんな苛立ちの解消法を見つけた。
「……あはっ、面白かったぁ……はぁ……」
ひとしきり笑ったあとで、アタシは真顔になってその男に言った。
「命乞いなんてした所で止めるわけねぇだろ。馬鹿か?」
「ぐがっ……」
アタシはその男の首を尻尾でさらに締め付けた。でも死んでしまわない程度にちゃんと空気は吸えるようにしてはあげている。
「残念だよねぇ、アンタが強ければこんな事になってなかったのにさぁ。ねぇ、なんでアンタがこんな死にそうな目に合っているのかわかる? アンタが弱いからなんだよ? 弱いクセに何でアタシに歯向かってくるのかなぁ……あはは、全くさぁ、雑魚は雑魚らしく這いつくばって逃げてればいいのに。あ、ひょっとしてお馬鹿さんなのかな? ねぇ、アタシの言ってる意味わかるかなぁ? わからないようなら……そうだねぇ、じゃあ一回だけ優しく伝えてあげるよぉ……ふふ、つまりね……雑魚のクセにアタシの前に出て来んじゃねぇよっ!」
アタシはそこまで言って一呼吸入れた。そして尻尾の力を更に締め上げながらその男に怒鳴りつけた。
「……っ!」
その瞬間、男は苦悶と絶望に打ちひしがれた顔を浮かべた。ふふ、アタシはそれが見たかったんだ。
きっとコイツは多少は強いっていう自信があったのだと思う。いや実際に強い部類の人間だとアタシも思うしさ。でもその自信を崩して絶望に打ちひしがれる顔をしてくれるのは最高に面白い。
「あはは、いいねぇ……その顔。 アタシ、人間は嫌いだけど、2つだけ好きな所があるんだぁ」
イライラしていたアタシは、この男を死ぬ最後の瞬間までアタシの玩具にしてやろうと思い、わざと暴言を浴びせていた。
「1つ目はもちろんその顔。絶望とか苦悶の表情は大好きだよぉ……ふふ、特に自分の事を強いって思ってる奴とか、自信に満ちあふれてる奴の顔を打ち砕く瞬間が愛おしい程好きなんだよね」
いや少なくともこの男は弱くは無いはずだ。手負いの状態じゃなければもしかしたらそこそこ良い勝負が出来たかもしれない。でもそんなのアタシには関係ない、ボロボロな姿でアタシに立ち向かったのが悪いんだから。
「ふふ……本当に……ざぁこ……ざぁこ……♡ 女の私に勝てないなんて……早く人生やり直した方がいいわぁ……ふふ、来世ではもっと強いオスに生まれ変われたらいいねぇ……?」
私は下卑た笑みを浮かべながらその男に向かってそう言い放っていった。
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