第14話 古代文明と異星人
朝霧のサービスがあった。見慣れた電柱シティの風景が幻想的で美しい。
「明日の支給品にフルーツを追加するよ」
ライラの提案にボルクが頷いた。
「三ヶ月も会わなかったんだから、少しはギクシャクしてもおかしくないな。今日は午後からこの三日分のデータを交換しよう。互いが分からなくなれば、分裂する」
「そうだよな、ボルク、ガイヤは一緒にいることに意味があるんだ。だから、ライラが集めたんだよ」
「そうだよ、今後のことを皆んなで考えないと、ヒジュもボルクも冷静にね。ガイヤの命は風前の灯だよ」
ビジュとボルクが笑顔を交わしたのを、カストルがほっとした目で見ている。
毎日の小競り合いが当たり前の日常だった。少し離れただけで亀裂なんて簡単にはいる。ライラも胸を撫で下ろした。
「ガイヤはやはり、一緒に行動しよう。離れちゃだめだな」
「僕も入れてよね、よそ者扱いはしないでよ」
そらまめが不安そうな顔をした。
「そらまめは要だよ」
「ボルクいいこと言うね、要って言葉は古代語なのか?」
「扇の要って、古代語にもあるよ、だけど象形文字だから読みは違うかもね、意味は同じさ」
皆んながボルクを感心したように見ている。
「ボルクは隠れた才能を開花させてる途中なんだ。成長が皆んなより少し遅れたんだ。つまり、ボルクのデータは俺らの何倍もあったんだって。すぐに追い越して行くと思うよ、せいぜい優しくしておけよ」
カストルがボルクを引き寄せた。
「そして、カストルは皆んなの親代わりみたいだな」
リゲルが茶化した。
「おうおう、だったらライラはママか? ちょっと頼りないなあ」
カストルがガハハと笑う。
「チップスよりはいい、チップスはリンダとミーシャのマネージャーみたいだ」
きんときが付け足した。
ガイヤたちは、子供の時から強い個性を持っていた。それでも分解せずにいられることが何よりありがたいと、それぞれが感じていた。
ボルクのデータは量が多すぎて、共有するにしても、保存してから必要なときに取り出すことにした。概要だけボルクが説明した。
「地球誕生から四十六億年。古代文明と言うのは、起源前七千年から三千五百年だ。四十六億年経過しているのに、人類の歴史なんてたかがそれだけしか解明されていない。五千五百年前に化石燃料を使用した痕跡があるとNASAが発表しているよ。ナウマン象が絶滅したのは起源前一万二千年。分かる限りの歴史をたどると、紀元前一万年八千年から一万六千年は最終氷期の最寒冷期だ。海水面の高さが現在よりも約百五十m低かった。日本は中国大陸にくっついていたんだ。
起源前一万八千年には、人類が移動を開始した。いいかい、これらは考古学的検知から明かされているんだSFじゃないし、ファンタジーでもない。起源前一万六千年から一万四千年には沖縄に人がいた。起源前一万五千年にはアルタミラ洞窟で壁画を残している。起源前一万四千年には縄文人が土器を焼き始めたんだ。人類発生と、文明発生は時期が違うってことだよ。
起源前って言うけど、こうしてみると、起源って定めている意味もないよね。アトランティス大陸があったのは起源前一万二千年あたりだ。すでにホモ・サピエンスが発生している。ただし、シリウス達は、そのころすでに異性人が地球にいたと言ってる。それから少し過ぎると、日本には地球温暖化の波が押し寄せる。起源前千年にはアナトリアのギョベク・テペに石造りの仏教寺院が建てられている。巨石文明は人間には築けない。トールグレイがグレイをたくさん作り、奴隷として建設したんだ」
「ちょっと待てよ、ボルクそれはシリウスの記録かい? トールグレイの記録?」
「シリウスはグレイが地球にやって来たときには阻止していた。シリウスはグレイを危険な宇宙人として、長い間監視しているんだ。だけど、ほんの小さな島国の日本の記録だけがおかしくないか? シリウスが知っている巨石文明の前から日本にはホモサピエンスとは別の知的生命体がいたんだ」
「彼等は文字に記録した」
ヒジュがぽつんと言った。
「そうだよ、アトランティスに現代人を凌ぐ文明があったけど、一夜にして地震と津波で消滅したんだ。その頃白人の人種が神と崇める帝国ラ・ムーがあった。ラ・ムーとアトランティスは同時に存在して、住んでる人種が違うんだ。ヒジュのデータと照合すれば、謎の多くは解明される。テレパシーで意思の疎通をしていたんだ。シリウス星人が加担して文明社会を築いていたと言うのは信じていいと思うよ。そしてシリウスたちが知らないところで、もうひとつの文明が築かれていた」
「高度な文明はムーもアトランティスも同時期に消滅している」
ライラもじっと聞いていたが、ここで口をはさんだ。
ヒジュが「ちょっといいかい」と解説を引き継いだ。
「トルコ南東部に存在するギョベクリ・テペ遺跡は一万二千年前に建造がはじまったんだ。遺跡が建てられ始めた時代には、人類は基本的に狩猟生活を営んでいて定住もしていないし、農耕は始まっていない。移動しながらの狩猟と採集で生活を送っていた人類が、なぜ巨大な遺跡を必要としたのかは、おそらくここで、シリウスが介入したんだ。シリウス星人って、地球人が勝手に呼んでいるだけで、高度生命体の宇宙人は皆んなシリウス人って呼んでいるのかも知れない。ギョベクリ・テペの遺跡の単位である円形のくぼみの位置を分析した結果を見たら、最初期につくられた三つのくぼみの中央地点が、底辺となる線の垂線を元に、綺麗な正三角形を描いていることが判明した。それで、シリウスが介入していたことが、すべての異星人に証明された」
目を閉じて聞いていたボルクが、立ち上がった。
「日本の記録では、現在の大阪南部と奈良の県境にまたがる葛城・金剛山系が古代より神奈備山としての信仰を集めていたんだ。高天彦神社は金剛山系に連なる白雲岳という山の麓に祀られた古社で、大昔にこの山中の聖林で行われていた祭祀が神社の起源だって言われている。平安時代の延喜式神名帳では、古くから特に霊験が著しいとされる名神大社のうちの一社として記載されている。元々は山そのものを御神体として拝する原始的な信仰の形態がとられていたことからも、かなり古い時代からの信仰の場だったんだ。また、高天彦神社が鎮座するこの御所市の山麓一帯は、日本神話に登場する天孫降臨の舞台・高天原であるとの伝説が残る地として知られていて、 神社の御祭神である高皇産霊神(タカミムスビノカミ)は、天地の始まりの時に現れた造化三神の一柱であり、天孫の瓊々杵尊(ニニギノミコト)が高天原から降臨する際に天孫降臨の命令を下した神。それがこの地に伝わる天孫降臨神話の大きな由縁になっている。このあたりのことは、飛田組も詳しいと思うよ」
「ボルク、あんたはだれなんだ?」
「僕は神の直系の子孫だろ、だから、異星人1号の血を引いているんだ。初期入植者のうちの誰かだと思っている。八咫烏は天皇の直属の部隊だよ。天皇になんらかの異常があれば、すかさず他の直系の者と入れ替えるらしい」
「つまり、ボルクはサブの天皇って理解しとけばいいの?」チップスはやっと理解した。
「壮大な話になったけど、異星人は地球をまた最初から作るってのか?」
「そうらしい、地球の文明を滅亡させるのはそんなに難しいことじゃないんだ。飛田組は文明の継承を担っている。巨石文明よりも、木材を使った方が後世の為になるってシリウスたちと話し合ったんだ」
ヒジュがすまなそうにみんなを見回した。
「治五郎さんは、地球代表って立場か」
カストルがため息をついた。
「うん、勝手に地球を放棄したんだ」
「ヒジュ、シリウスも治五郎さんも、思い上がっていると思わないか?」
「ボルク、私もそう思う。人類の命を勝手に決めるなんてあり得ないよ」
「あのさあ、火星への補給が絶たれて、シリウスが地球滅亡を実行に移すとしたら、大地を持たないガイヤはどちらに味方する? 」
「ライラ、もしも地球の文明が破壊されるとしたら、宇宙人のガイヤが阻止するべきじゃない?」
チップスがイライラした様子で部屋の中をうろうろ歩き始めた。
「シリウス達は地球人よりも遥かに優れている。ガイヤに何ができる?」
「地球人? 日本人にはかつて知的生命体がいて、シリウス達と争い勝利した記録がある。飛田組はそれを知っているはずだ」ボルクはきっぱりとした口調で言った。
「ああ嫌だなあ」ライラは思わず口走った。
「嫌よね、知的生命体とガイヤが争うなんて、映画の世界よ。あり得ない」
リンダはヒジュの手を握り、暴走を止めているんだとライラは気付いていた。
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