猫便り ~綴り屋 雫(シズク)~

ペンサキ(先)。

第1話 プロローグ

丸っこい3色毛玉のようなモフモフしたものが、クリクリ小刻みに揺れながら道を通っていく。


町をブラつく1匹の三毛猫。

首には焦げ茶色の革でできた首輪にゴールドの音符♪パーツがくっついている。

名前はその首輪が示すまま音符(オンプ)。


その飼い主は、文房具会社の事務をしている萩野雫(ハギノシズク)だ。

職場ではそつなく仕事をこなし、ほどよく同僚とコミュニケーションをとり、あまり目立たないようにしている(というより、意識せずとも目立たない)。


夕方5時。従業員50人ほどの会社は、比較的就業時間通りに上がれるのがこの職場の良いところだ。

「お疲れ様でした!」

と挨拶をして帰宅する。雫の住んでいるところは都会とはお世辞にも言えないので車通勤。しかも20分足らずで帰宅できる。


祖父母が住んでいた木造の平屋。

そこに、三毛猫のオンプと2人(1人と1匹が正しいか...)で住んでいる。

古いと言えば古いが、庭があり、縁側があり雫は気に入っていた。


「ただいま~」


「ミャァオ」

とオンプが足元にすり寄ってくる。


「今日はどんなお手紙持ってきてくれたのかな。また後で見せてね。」


荷物を置き、食事や洗濯、お風呂...

一通りが終わったら"綴り屋"の仕事開始だ。

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