飛飛と呪いの鏡。(フェイ・フェイとのろいのかがみ)

猫野 尻尾

第1話:謎の風呂敷包み。

中国に「聊斎志異りょうさいしい」と言う伝記小説があります。

短編を集めたもので怪奇的な物語、花や動物の化身・妖怪・幽霊など

人間との情感豊かな交流をユーモアと痛烈な風刺で描いたお話。


この物語はその中にでも出てきそう〜な現代的不思議なお話です。


この物語の主人公は「水無月 愛彦みなづき よしひこ 」って男子。

歳は23歳、地元の出張所に勤めるサラリーマン。


そして彼には、ちょっとばかし変わった彼女がいる。

その変わった彼女の名前を「飛飛フェイ・フェイ」って言う。


なんで中国人みたいな名前の彼女が愛彦にできたのかって言う話だけど・・・。


彼の家は水無月堂みなづきどうと言う老舗のお菓子屋さんを営んでいて広い敷地には、

愛彦も中に入ったことがない大きな蔵があった。


愛彦の曽祖父は若い時から精力的な人で何度も海外にでかけては

めずらしい壺とか骨董品を収集することが趣味の人だった。


だから蔵の中には何が入っているのか家族のものでも分からない物もあった。

曽祖父が他界してからは、この蔵の扉は一度も開かれたことがなかった。


そこで、何年も放置してある蔵の中を一度整理しようと言うことになった。

愛彦も片付けと掃除に駆り出されることになった。

居候の身だから断るわけにはいかなかった。

でも、古い蔵だからもしかしたらお宝が埋まっている可能性もあった。


愛彦の祖父はとっくに他界していて、父も愛彦が幼い時に病気でこの世を

去っていた。


今は母親と兄と家族三人で老舗を守って暮らしていた。

お菓子屋店は長男が継いでいる。


愛彦は 特に目立つほどのイメメンではなかったが付き合うと必ず不幸に

なるって言うダメンズでもなかった。

真面目に働いて誰からの好かれる道徳的で常識的なごく普通の青年だった。


そして、愛彦が会社が休みの時、 蔵の片付けと掃除が始まった・・・。

兄は店があったので閉店してから片付けを手伝いに来た。


会社が休みのたび母親とふたり、掃除を続けたが、訳のわからない物が

たくさんあって整理と掃除とで大仕事になった。

ガラクタもふくめていろんなものが出てきた。


一度引っ張り出すと元には戻せないくらい古い物がたくさん出てきて

廃棄処分しないと収まりがつかなかった。


愛彦はその骨董品類の棚とは別の棚に一個だけ大切に風呂敷に包まれた、

なにか平たい四角い箱のようなものを見つけた。


愛彦は、その風呂敷包みは他とは少し違うなにかを感じた。

愛彦は霊感などというものには縁がなかったが、その時は不思議と、その

風呂敷包みになにか感じるものがあった。


そのまま骨董品として処分してしまっても誰も文句は言わなかっただろうと

思ったが、愛彦はどうしてもその大事そうに包まれてる風呂敷を解いて

みたくなった。


その風呂敷に包まれた箱を手に取ると 風呂敷包みは


「お願い、ここから出して・・・」


そう言ったような気がした。


「まさかな・・・」


愛彦は空耳かと自分の耳を疑ったが箱はもう一度


「ここから出して」


そう言った・・・たしかにもう一度言ったように聞こえた。

しゃべる?・・・その箱が気になった愛彦は 一応母親と兄に、自分が箱を

引き取ってもいいか許可をもらって 掃除が終わった後で自分の部屋に

持って帰った。


母親も兄も、たかが一個の箱のことなど眼中になく、とにかく当面の忙しさで

それどころではなかったのだろう。


愛彦にはその風呂敷に包まれた箱が、なぜか愛彦に開けて欲しがってる

ように感じたのだ。


たしかに「ここから出して」って箱から声がした。

それは自分の思い違いなんかじゃなく、絶対間違いないことだと愛彦は

思った・・・。


つづく。

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