変わりゆく世界でも黄色く色づく

野林緑里

第1話

どれくらいの時が流れたのだろうか。


まだ若かったころは何もかも希望に満ち溢れていたような気がする。



しかし、年月がすぎ年をとるにつれてあらゆる事柄が決して望むものばかりでないことがわかってくるのだ。


多くの命が生まれ


多くの命が消えていく

 


愛しあう一方で


憎しみ合う



そんな光景が何度も何度も繰り広げられている。


なんて愚かなのだろうか?


なぜそのような愚かなことが繰り返し起こるのだろう。


花が植えられて咲き乱れたと思えば踏みにじられる。



すべてがなくなって


更地になり


転がるのはかつて生命を宿したものたち。


なんど繰り返せばよいのか。   



ただ問いかけてみるも答えてくれるものなどいない。


たくさんの争いを見てきた。


永遠に争うのではないかとさえも思えたのだ。



すべてが焼かれて無に喫する。



それで終わりなのだろうとおもってきたのだが、なんともしぶとい事なのか。


気がつけば焼け野原となっていた土地には多くの建物がならび、多くの人たちが行き交うようになった。



ようやく争うことをやめたのだろうか?


そんなことを考えていると小さな諍いを目にする。


まだ幼い子どもたちが他愛のないことで喧嘩しているのだ。


けれどやがて彼らはお互いに笑い手を取り合う。


その光景をみていると決して絶望ばかりでないのだと感じてしまうのだ。


どうかそうであってほしい。


けんかしてもいずれ手を取り合うようになってほしいと祈るばかりだ。



「今年もきれいね」


「そうだな。今年もきれいな色で染まっている」


「ねえ。知ってる? このイチョウの木って樹齢千年らしいわよ」


「へえそうなんだ。なら、戦国時代も太平洋戦争もみてきたのか」


「そういうことになるわね。聞いてみたいわ。ねえイチョウさん、どんな千年だった?」


そういってそのカップルはわしを見上げる。


語ってもよいとは思うが彼らにはわしの声は聞こえないだろう。



でも感じてくれると嬉しい。


わしはそう願いながらそのカップルに語りかけた。

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変わりゆく世界でも黄色く色づく 野林緑里 @gswolf0718

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