死に場所を求めて魔王討伐隊に志願したら、英雄になりました~千年前にAランク冒険者だった私、現代ではSSランク勇者より強いそうです~
ネコクロ【書籍7シリーズ発売中!!】
プロローグ
「――なんだ、あのボロ切れを
「はは、まじだ! あれで魔王軍と戦うつもりか!? はっ、死んだな、あいつ!」
私を指さし、冒険者らしき男たちが大声で笑っている。
仕方がない、実際身に纏っているのは、ボロ切れなのだから。
お金がなくて、こんなものしか手に入らなかった。
「静粛に!!」
ざわついていた広場が、号令によって一瞬で静まり返る。
壇上には、純白の鎧を纏った金髪の綺麗な女性が立っており、彼女が場を制したのだろう。
集まった冒険者たちを見回しながら、彼女は息を大きく吸う。
「冒険者の諸君、よく集まってくれた! 私は騎士団長のリリアン・フォン・シルヴィアンだ! 事前に通達していたように、我々の役目は勇者一行を魔王のもとへと――!」
高らかに演説していたシルヴィアンさんは、私と目が合うと言葉を止めてしまった。
そして、壇上から飛び降り、まっすぐと私を目指して歩き始める。
まずい……。
「
「は、はい! ミリア・ラグイージです!」
「聞かぬ名だな……。まぁ、その恰好を見れば、名を
シルヴィアンさんはゴミでも見るかのように冷たい目で、私を頭から足先まで見てくる。
彼女から見たら、私は虫けら同然なのかもしれない。
……それにしても、王国の騎士団長でシルヴィアンさんと聞いたから、てっきり血筋だと思ったけど――
まぁそれもそっか。
ほんと、死にたい……。
「ふっ……まぁ、囮くらいにはなるだろう。歳は十八くらいか?
シルヴィアンさんは鼻で笑いながら、私に蔑むような目を向けてくる。
随分といい教育をされているらしい。
まぁ、偉そうにしてても仕方ないか。
この王国には四人しかいないというSランクなのだから。
他の三人は勇者パーティーの面々らしいし、彼女が飛び抜けた実力を持っていることは間違いない。
よく知らないけど、親切なおじさんが前にそう教えてくれた。
いいなぁ、Sランク。
私は届かなかったしなぁ。
というか、Sランクに届いたのってお姉様しかいなかったのに、今の子たちって凄い。
だって、今の勇者ってSSランクらしいもんね。
初めて聞いたよ、Sランクの上があるなんて。
それだけ今の子たちが凄くて、ランクも増やしたんだと思う。
「おい、聞いているのか?」
「は、はい!」
考えごとをしていると、シルヴィアンさんに睨まれてしまった。
見た目の年齢は、私より七つくらい上だろうか?
若いのに騎士団長なんて、凄い。
あと、怖い。
「さっさと鎧に着替えてこい。この者たちについて行け」
シルヴィアンさんは、二人の女性騎士を指さす。
雑用みたいなことをさせられるなんて、階級が下の人たちなんだろう。
それにしても、こんなボロ切れを着てる人間を追い出さないどころか、鎧を提供してくれるなんて、態度に似合わずいいところがある。
……でも、鎧かぁ。
鎧って重いから嫌いなんだよね……。
というか、魔法剣士の私にはいらないものだし。
だけど、着ないと連れて行ってもらえなさそうな雰囲気なんだよね……。
――ということで、騎士団の人に黙ってついて行き、渡された鎧を着た。
すると――。
「か、軽い……! 凄い、この時代ってここまで技術が発展してるんだ……!」
鎧っていうと、腕が持っていかれそうなくらい重たいイメージだったのに、まるで羽毛で出来ているかのように軽い。
これなら非力な私でも、自由に動き回れそうだ。
昔もこれがあったら、私も鎧を着て戦えたのになぁ。
「――軽い……? この鎧が……?」
「普通に重たいよね……?」
「えっ、何か言いました?」
鎧に感動していると、私の後ろで同じ鎧を身に纏っている女性騎士の二人が、何かブツブツ言っていた。
だけど、私が話しかけると、二人とも顔をブンブンと横に振ってしまう。
どうしたんだろう?
まるで、得体のしれないものにでも声をかけられたかのような、必死さだ。
「――おい、いつまでかかっているんだ! さっさと来い! 置いて行くぞ!」
「あっ、すみません! 今行きます……!」
部屋の外から野太いおじさんの声に怒鳴られたので、私は慌てて部屋を出る。
まったく、今も昔も偉そうな人は変わらないなぁ……。
とはいえ、やっとこれで死ねる。
私がこの討伐隊に参加した理由――それは、冒険者である私の死に場所を、求めてだ。
魔王との戦いで死ぬのが、私には相応しい。
そうすれば、みんなも私のことを許してくれるだろう。
――こうして、魔王との戦いに参戦した私。
まさかこの戦いによって――私が英雄扱いされるようになるだなんて、この時は思いもしなかった。
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