親友の彼をNTRしようとして、失敗した私の話。

木立 花音@書籍発売中

 十一月二十二日。通称、『いい夫婦の日』。

 大安吉日となった今日、都内の多くの結婚式場で、挙式が行われているのだろうと思う。

 かくいう私も、今日は結婚式場にきている。残念ながら、自分の結婚式というわけではなく、友人の結婚式に参列しているだけなのだが。

 空は雲ひとつない快晴だ。いい、結婚式日和。

 高校時代からの私の親友が、ウェディングドレス姿で式場から出てくる。晴れやかな顔で、周囲に向けて手を振ったそのあとで、仰々しい仕草で背を向けた。手に持っていたブーケを、後ろ手に放り投げる。

 爽快な青空をバックにブーケが舞う。

 こっちにくるなよ、と願う私の思いは届かず、ブーケがこちらに迫ってくる。

 狙ったわね、あの子。

 仕方なしに受け取って、我知らず苦笑い。

 おめでとー、と周囲から声を掛けられ、今度は愛想笑い。

 あの子と目が合うと、彼女は五回瞬きしてみせた。

 二人で決めた、【がんばろう】の合図。

 そうだね、頑張ろう。お互いに、ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る