『スローライフ』はトレンドじゃない
一年前にトレンド王国が滅んだ事を今更知った。
私達は元々トレンド王国に住んでいたけど特に感じるものはなかった。
流行りなんて物に左右されない普通の村で静かに暮らす方が私には合っていた。
今住んでいる私を含めた村の住民達は、元々トレンド王国に住んでいた者達だった。
村の名前は『スタレモノ』。住民達は元々流行りに乗れないからとトレンド王国から追い出されたり、悪人が流行りを悪用し理不尽な目に遭わされて追い出されたりと私の様なトレンド王国の被害者が殆どだ。
この村ではトレンド王国で得た物を全て捨て協力し合っている。
例えばトレンド王国で元貴族だった女と元スラム住みの男がこの村で結婚して一緒に畑を耕している。
戦った事のない貴族が冒険者と一緒にダンジョン攻略などの冒険者活動をしている。
そんな村だ。
私がこの村に来たのは力を封じられ魔物が住む森へと捨てられた時、半年前だ。魔物に殺されかけた私を村のみんなが救ってこの村に案内してくれた。
それから半年後に私は冒険者の青年と結婚した。
彼も去年にトレンド王国の被害者で流行を悪用する男に結婚を約束していた彼女を寝取られた上に冤罪でトレンド王国から追い出されたらしい。
私はそんな彼に一目惚れだった。それは彼も私と同じく一目惚れだった様でデートを重ね結婚した。
そしてゆっくりと畑を耕したり気分転換のデートとしてモンスターを狩りに行ったりしている。
そんな生活を私は『スローライフ』と呼んでいる。
『スローライフ』。とある作品のタイトルであり、忙しく休めない貴族社会に疲れた一人の貴族が全てを捨てて知らない場所でゆっくりとした生活を送る話だ。
私はそんな生活に憧れていた。そして今その生活をしている。
私は今幸せだ。政略結婚によって自由な恋愛ができなかった。だが今はあの馬鹿な王子の様に『真実の愛』を見つけた。王子とは違い誰にも迷惑をかけてない『真実の愛』を。
私達夫婦はその愛を育んでいる。その愛を失わない様に。
私はもう貴族社会という鳥籠の中で縛られて暮らす鳥ではない。誰にも邪魔をされず何にも縛られずに自由に空を飛ぶ鳥なのだ。
そんな事を考えていた夫が帰ってきた。
「ただいまジュンアイ。今日は村の畑を荒らしていたモンスターのボスをみんなで討伐してそいつの肉を貰ってきたんだ。相当デカかったから貰ってきた肉も大きいぞ!
今日の夕食はこの肉を食べよう。」
「ええ、そうね。それにしてもすごく大きいわね。
よーし今日は腕を振るっちゃうわよ。楽しみにしててね!」
こうして私は第二の人生を謳歌するのだった。
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