『タイム・レコーダー』
やましん(テンパー)
『タイム・レコーダー』
『これは、フィクションです。』
危ない科学者、荒川放水博士は、このたび、『タイム・レコーダー』を完成させた。
これは、その場所でかつて聞こえた音を、遡って聴くことができる機械である。
もちろん、録音も出来るのだ。
地球は、巨大な記憶媒体であり、過去の、すべての音や光景を記憶していると、博士は考えた。
それを、追及し、ついに完成させたのが、この、特定の時間を設定して、地球の記憶から直に音を再生する装置なのである。
博士は、特許を取るかどうかについては、いささか迷っていた。
あまりに、革新的すぎるからであるし、また、歴史の研究だけではなく、さまざまな犯罪や、政治的な目的でも使われかねない。
だから、作ってはみたが、公表することは止めようと思った。
これまでは、金儲けなら、なんでもありの荒川博士であったが、これは、販売するには、あまりに危なすぎるのである。
それよりは、自分のために、自分だけで使うのがベストである。
😃
しかし、いささか問題がある。
つまり、地球さんが、音を聴くことができる場所、範囲でなければならない。
一方、声というものは、意外に遠くまで届くし、地球さんは、じつに高感度である。
つまり、場所によっては、沢山の音をまとめて記録しているから、目標の音を取り出す仕組みも必要だが、そのあたりも、ばっちりであった。
取りあえず、自分の研究所で実験したが、それはもう、抜群である。
博士がいないときに、いかに部下たちが悪口を言っていたかなんて、すべて分かった。
次回の人事に使ってやる。
しかし、それなら、盗聴器でもできる。
ここには、戦時中は、軍の秘密施設があり、なにやら、怪しい実験が行われていたという、噂があった。
そこで、博士は、次々に、戦時中の時間を設定したのである。
すると、でるわでるわ。
もう、思いっきり聞こえてくる。
…………………………
『……あらかわはかせ、なに、つくってる。』
『少佐、こいつは、人間を自由自在に、操るお薬ですぞな。』
『軍の役に立つのか?』
『そらもう、ばっちりぞな。』
『なら、見せてみろ。』
『あんさんが、被験者つれて来なさい。』
『よし、明日のばん、8時にくる。』
…………………………
『この声は、おやじどのだ。ここで研究していたなんて、初耳だ。どうりで、すんなりここが手に入ったわけか。』
改めて、親の恩を知る博士であった。
『よし、次の日の8時、と。』
博士は、機械の日と時間を進めた。
…………………………😳
『はかせ、おつれしてきた。わが隊の、下士官の流山主任。こちらは、お父上。部隊で商売をしている。やり手です。』
『それはそれは、あらかわぼうすいぞな。ま。ごゆるりと。お父上は、先に食堂にご案内します。』
『きみ、ご案内しろ。』
『あい。』
『ああ、で、あなた、ちょっと……… 』
『あ、はいはい。あら、いたい。』
『ダイジョブ。すぐ。きぶんよくなるぞな。』
『はかせ、うまくゆくのか?』
『もちろん、効き目ははやいぞなもし。』
『おーそろみおー。すたんふろんてあて〰️☺️』
『ほら。きいてきた。きみ、わらしのめいれいにしたがいなさい。』
『そらも。』
『なら、お父上を、この銃で撃たせろ。』
『はあ。それは、いくらなんでも。』
『軍の命令だ。』
『はあ。では。きみ。この銃で、父上を殺害したまえぞな。』
『そらも。』
……………
銃声
……………………………
荒川放水博士は、ちょっと唖然としてしまった。
悪辣な博士ではあるが、いくらなんでも、これは、やりすぎであろう。
『まあ、昔のことだがな。ふーん。これは、使えるかもしれないな。ただ、場所を選ぶ必要がある。もしかしたら、ひみこさまの声とかも、聴こえるかもしれない。大統領の生の声。昔の大臣たちの告白。今の大臣や、知事の生の声。さらに、おいらを悪者にしている、あの、にっくき、やましんの声。ふふふ。楽しみだなあ。つぎは、遡って、その昔の光景が見える機械を作ろう。あ。ちょっと、きけん、かなあ。はははははははは。』
おわり
😩😵😣😲😨😱😫😭😢😠😡
『タイム・レコーダー』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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