大学の同期に急に落とします宣言されました
しがと
第1話 突然の告白
「ねえ、覚えてる? 今日は落とします宣言された日だよ」
「ああ、今日か。よく覚えてるな」
「急だったからよく覚えてるよ」
私、
今から5年前、私が大学2年生だった頃。授業が良く被る男子グループの1人、
「なあ、山野さんってどんな人がタイプなの?」
彼らとはよく話すけれど、私の恋愛の話をすることは1度も無かった。正確に言えば、私に話せるだけの恋愛経験が無かったのだが。だから、急にこう話しかけられてものすごく驚いたのを今でも覚えている。
「タイプ? 黒髪、碧眼、高身長、イケメン……」
私の好きな推しキャラの特徴を挙げていたら、そうじゃない、と突っ込まれた。
「現実で付き合うならどういう人がいい?」
「ああ、そういうこと。うーん。まずは、私を大事にしてくれる人。あとは、そうだな……」
「顔とか背とかは?」
「うーん。顔は特に希望なしかな。好きになったらその人の顔が1番好きになりそう。背は、私が低いからあんまり高くない人がいいかな。まあ、何センチでもいいけど」
「なるほど」
「あ、あとは一緒にいて楽しい人がいい」
「そうか。その条件にぴったり合う人がいるんだか、紹介してもいいか?」
「いや、いいかな」
彼氏を募集していない私は紹介を断った。しかし三輪君は引き下がらなかった。
「なんで? 彼氏いらないの?」
「いらないっていうか。好きな人が出来たら付き合いたいな、とは思うけど、彼氏を求めてるわけではないというか」
「ああ。なるほどね」
すると、他の男子がこう話しかけてきた。
「頼む! その人俺たちの友人で、山野さんのこと気になっているから紹介させてほしい! 恋人無理なら友人でもいいから!」
彼らにとってとても大切な友人らしく他の人たちも頭を下げてお願いしてきた。その姿を見たら、やはり紹介はいらない、とは言えなかった。
「まあ、そこまで言うならいいよ。恋人になるかは分からないから、それでも良ければ」
「まじ? さんきゅ」
そう言った彼らは、今まで1言も発さなかった、いつも元気で面白い新岡穣を私に紹介してきた。
「彼は新岡穣。身長165センチ、誠実、恋愛経験はほとんどないが、そこもぴゅあで加点ポイント。それから……」
「いや、新岡君のことは知ってるよ。って、私のこと気になってるの!?」
「うん、そう」
今日初めて彼が話した。
「俺、山野さんのこと好きだから。山野さんに恋人がいなくて好きな人もいないなら、落とすから。全力で。絶対に。だから、連絡先を教えてほしい」
彼は一息に告白と宣言をした。周りは、よく言った! と騒いでいるし、一緒にいた私の友人は、漫画見たい、とか何とか騒いでいる。そんな中、無理とは言えなかった私は、彼に自身の連絡先を渡したのだった。
「山野さん、これおいしいスイーツどうぞ」
あの公開告白&落とします宣言から、2週間が経った。新岡君は2、3日に1度のペースで話題になっているスイーツを私に買ってきてくれる。スイーツが好きな私は、ありがとう、といつも受け取り、おいしく頂いていた。
そして、それは大学の中で話題になっているらしい。目立つタイプではない新岡君が公開告白をしたため、みんな興味深々なのだ。みんな彼を応援しているらしく、新岡君とはどうなの? 新岡いいやつだぞ、と色々な人から声を掛けられるようになった。
「はー、お疲れ様」
「お疲れー」
授業後、私は友人の
「で? 新岡君とはどうなのよ?」
「どう、とは?」
「ほら、いつもケーキとか買ってきてくれるじゃない。おいしいんでしょ? どう、惚れたりしないの?」
「おいしいケーキ買ってきてくれたから惚れる、ってそれ簡単な女過ぎない?」
「いいじゃん、新岡君は惚れてほしくて買ってきてるんでしょ?」
「そうだけどさ」
「何? 何か気になることでもあるの?」
「気になること……」
ある。ある。あり過ぎる。まず、なんで私なのか。おしゃれ好きでもない、大学に行くときは必要最低限のメイクしかしない、いわゆる、女の子らしさが余りない私を好きになるのはなぜなのか。そして、どこでおいしいスイーツの情報を仕入れてくるのか。ネットに出ていないようなお店の物を買ってきたこともあった。私はスイーツ巡りが好きだからそのお店を知っていたけれど、スイーツに縁のない新岡君がなぜ知っているのか。それに、なぜ友人を通しての紹介という方法を選んだのか。私だって新岡君のことは知っているのに。聞きたいことはたくさんあるのに、いざ本人を目の前にして聞く勇気はなかった。落としやすそうだったからって言われたら? 合コンに行ったりして知り合ったスイーツ好きな女の子たちから聞いた、って言われたら? 絶対に落ち込む。そう思ったら新岡君に一歩踏み出せないのだった。
「大丈夫?」
長い間考えすぎていたのだろう。梨沙に心配をかけてしまった。私はあわてて笑顔を作って大丈夫だよ、と返した。でも笑顔が少しぎこちなかったのだろう。ごめん突っ込み過ぎた、と謝ってきた彼女は、夏休みのことへと話題を変えてくれた。
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