未来のパートナーを想い想い想い想い続けるお話
穂村大樹(ほむら だいじゅ)
プロローグ1
「はぁ……。どこでなにしてんのかなぁ。俺の未来の嫁」
小高い丘の上にある公園で、町の景色を見渡しながらそんなことを呟く俺、
今の発言からは、あたかも結婚を急いでいるアラサーのような印象を受けるだろうが、決して結婚を急いでいるわけではない。
中学生のうちから自分が結婚できるかなんて、心配する必要も焦る必要もないことくらい理解している。
俺はただ純粋に、自分が将来どんな人と結婚するのか気になっているのだ。
「中学生のうちからそんな心配する必要ないでござる。頼音氏はイケメンと呼ばれる側に分類される人間なのですぞ? 我のほうがよっぽど将来を憂い心配するべき人間であります」
俺の横でデュフフと笑みを浮かべているのは、中学に入学してからなぜか仲良くなった
卓志は学校内で唯一、学校にいる間も頭にバンダナを巻くことが許された男子生徒で、所謂オタクだ。
自分で言うのもアレだが、ある程度顔も良く、周りに合わせる能力のある陽キャの俺と、コミュニケーション能力が低く、小太りな卓志とではそもそも住む世界が違う。
それなのに、なぜか卓志と一緒にいると居心地が良くて、こうして二人でいることが多くなった。
「意外と卓志のほうが俺より早く結婚したりしてな」
「デュフフ。それは流石に無いでござるな」
「さあどうだか」
「それにしても、なんで未来のお嫁さんがどんな人かがそんなに気になるでござるか?」
「いや、普通に気になるだろ。なんか不思議じゃねえか? 将来二十五歳かそこらで結婚して、半生以上の人生を共にするであろう嫁がさ、今自分と全く別の人生を送ってるって」
この話は卓志以外のクラスメイトにもしたことがあるが、『そんなの考えるだけ時間の無駄だろ』と一蹴されてしまう。
それでもこの興味を心の奥底にしまい、隠して消し去るべきだとは思っていない。
「まあそう言われてみればそんな気がしなくもないでござりますな。まっ、我はそもそも将来お嫁さんができるかどうかわかりませぬがなデュフフ」
「それは俺も同じだろ。そうだな。まずは将来嫁ができるよう自分磨きでもしとくか」
「そうでござるな。気が早いでござるが、自分磨きなんてどれだけしても無駄にはなりませぬし。とにかく将来自分のお嫁さんになる人の話なんて今考えてもどうにもなりませぬし、一旦置いておいて明日見にいく映画の時間を考えましょうぞ」
「……そうだな」
そう、卓志の言う通り、将来の嫁の話なんて今から気にしたって意味はない。
そうわかっていても、未来の嫁がどんな人で今どこにいるのか、それを考えずにはいられなかった。
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