僕の妻は地上に舞い降りた天使様っ! かえでさん♪
ほしのしずく
第1話 かえでさん♪
――ある土曜日の昼下がり。
リビングの窓から流れてくる風が、黄緑色のカーテンを揺らし。
インスタントコーヒーに香りがほのかに漂う、いつもとは違う静かな空間。
本来であれば、育ち盛りの子供たちがゲームなどを取り合ったり、友達を自宅に招いて大騒ぎをしたりする日。
だが、今日は特別だ。
今日は結婚記念日ということもあって、気を利かせてくれた僕の祖父母が、子供たちの面倒を見てくれることとなり、1年振りとなる夫婦水入らずの時間を過ごすことができていた。
僕がこの有意義なひと時に浸っていると、隣でオレンジジュースを飲んでいる彼女が話し掛けてきた。
「あっくん、そういえば……婚約指輪、売ってもいいか……な?」
彼女は、何食わぬ顔でオレンジジュースを、まるで温かいお茶を飲むかのように、すすり飲んでいる。
きっとこれが普通の人なら、ここで耳を疑うと思う。
一体どうやって、「そういえば」という言葉に辿り着いたのか、MRIで脳波も測りたくなることだろう。
でも、僕の妻である楓さんは、これが通常モードだ。
それに可愛いので、正直そんな細かいことはどうでもいい。
ここで、そんな僕の愛する妻である、超絶可愛い楓さんを紹介しようと思う。
まずは、外見と好きな物
身長 :140センチメール
スリーサイズ:子猫が丸まったくらい。
体重 :蝶のように軽いらしい。本人曰く。
髪型及び髪色:猫の耳のように髪が立っている。
しゃべると動く。何故か。
髪の毛を切ったところみたことが
なく、小麦色をしている。
顔全体雰囲気:猫っぽい
肌の色 :雪見だいふく。
服装 :ご当地ゆるキャラ投票ランキング
98位/100位。猫とスライムが
合体した”にゅらいむ”のフード付き
の白色のパーカー着ている。
下は短パンしか履かない。
というか、それ以外の服を着ている
のを見たことがない。
足音 :歩く時に独特の「とてとて」という
エフェクト音が鳴る。
つまり、誰がどう見ても、この僕とは同年齢と思えない容姿をしている。
実際、彼女が迷子になった時など。
僕は保護者として、扱われることしかなかった。
まぁ、でもこれも楓さんの溢れ出る可愛さ。
いや! キュートさのせいなので、全く問題ない。
そして、性格。
ここも加点ポイントしかない。
さっぱりしているというか、どこか常識では測れない行動や考えを見せることがある。
例えば、出産した数時間後には退院できたり、包丁で指を切っても「大丈夫……すぐ治る」と何食わぬ顔したり。
生まれたばかりの子供たちを「強くする為……こうしたほうがいい」と言い張り、山に置いていこうとするとか。
あとは、飛行機など、機械的なものを「意志を持たない鉄塊が浮くことが理解できない……」といい、搭乗ゲートから動こうしないとかだ。
部下にこの話をした時は、ドン引きされてしまったが、僕的には、このどれもが彼女という可愛いの権化。
唯一無二の存在を掻き立てる要因になっているので、モーマンタイだ。
僕らの日々をざくっりと説明すると、こんなところだと思う。
本当は、結婚するまでの流れもなかなかだったので、ついでに明かしたい。
それに僕らの子供たちもPerfect! なので、その紹介をしたい……。
したいが、そうすると永遠に語ってしまうことになる上、話が逸れてしまう。
なので、今はここまでで。
また機会があれば、アツ語りしようと思います。
それこそ、10万文字を超える長編で――。
そんな彼女に、僕はいつも通り返事をした。
「売るのはいいよー。でも、そのあとどうしようか? 婚約指輪がなくなっちゃうのは寂しいし、新しいのを買うとか? どう?」
「んっ………。 それにはちゃんと考えがあるから、私に任せてほしい……」
この提案を受けた楓さんは、コクンっと頷き。
いつも通り大それた反応を見せることはないが、髪をぱたぱたと動かしていた。
いつもながら、可愛いの化身。天使様と化した我が妻を前に、僕の右手は自然とその頭に吸い寄せられてしまう。
「ふふっ、よしよし」
「ふへへぇ……ふにゃふにゃ……」
頭を撫でられるのが、大好きな楓さんはコップを見つめながら、丸い目を糸のようにさせて微笑んでいる。
そして、僕の手にすり寄り、フローリングに着くか着かないかの、チャーミングな足もぶらぶらと揺らしていた。
もう長いこと一緒にいるが、やはり尊い。
尊と過ぎる。
その存在、まさにギルティ……。
あ、あれ――。意識が――。
天使となった彼女を前に、意識がとびかけた僕は顔面に
あ、危なかった。あの有名な童話のように、微笑みながら召されるところだった。
近くに犬はいないが――。
とにかく、いつもは
僕の様子を、真近で見ていた可愛いの化身の天使様はというと、首を傾げて頭上にはてなマークを浮かべている。
これもいつも通りだ。
周囲に影響を及ぼすほどの、自身の可愛さに全く気がついておらず、僕の反応にも特に関心がない。
そうこれぞ、THEジャパニーズクールビューティー! わびさび……。
「フフッ……」
僕がひとりでに笑みを浮かべていると、可愛いの化身、天使様から、クールビューティー女神となった、楓さんが口を開いた。
「あっくん……売ってきてもいいかな……」
僕はシンプルに楓さんへ返事をすることにした。
理由は単純。
あんまり騒がしくしていると、彼女の機嫌を損ねてしまい口を聞いてくれなくなるからだ。
そうなると僕の3大欲求の1つである、楓さんとの会話が失われてしまう。
それは僕にとって死活問題。
ちなみに、僕の3大欲求は、楓さんとの会話。
楓さんとのじゃれ合い。
だから、ここは嫌われないように接する。
「わかった。じゃあ、楓さんにお任せするね」
「……う、うん。ありがと、あっくん……」
彼女は、自分の提案を受け入れてもらったことも、とても嬉しかったようで。
見つめていたオレンジジュースの入ったコップを小さく猫のような両手で持ちながら、口元を緩ませ。
雪見だいふくのように、ぷっくりとした頬も桃のように色づかせていた。
「ふふふ……よかった……」
はてなマークが浮かんでいた頭上にも、ご機嫌モードを表す音符マークが浮かんでいる。
うん、やはり。我が妻はレジェンダリーに可愛い。
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