転生してもドMだった件~最高の痛みを探したいだけなのに、肉体が強すぎて痛みを感じない~

嬉野K

転生してもドMだった件

MとS

第1話 危険人物がいたものですね

 もしも生まれ変わるならサンドバッグになりたい。俺は常に、そう思って生きてきた。


「危険人物がいたものですね」

「頭で何を考えていても、俺の勝手だろう?」そもそも、危険人物はお互い様だ。「別にその性癖で誰かを傷つけたことはない。公共の場ではちゃんと我慢してた」


 なんとなく……自分の性癖は異常なのだと思っていた。だから知り合いにも家族にも言い出せなかった。


 だが……


「信じてもらえないと思うが……俺は別の世界を生きた人間なんだ。それでその世界で死んで……この世界に来た」

「……転生してきた、ということですか?」

「ああ」そんなことありえない、と思っていたが……実際にしたのだから信じるしかない。「そして俺は誓ったんだ。もう自分の趣味趣向に、正直に生きると」

「……つまり……?」


 俺は彼女の持つものを指さして、


「そのムチで、俺を思い切り殴ってくれ」


 そう。それこそが俺の生きがい。俺の興奮と絶頂。


 俺は俗に言うドMというやつなのだが……最高まで満たされたことはない。


「転生した俺の体は、異常に強くてな……痛みを感じることすら稀になってしまったんだ……」殴られても痛くないし、蹴られても意味がない。刺されてもなにも感じない。「だから最高の痛みを求めているんだ。そんなときに、あんたの噂を聞いた」


 今みたいな話をすると、大抵はドン引きされる。


 だが……目の前の女性はどうだろう。ドン引き、はしていないようだった。驚いてはいるのだろうけれど。


 とりあえず……少しくらいは話を聞いてくれる気になったようだった。


「……あなたが私のところに来ることになった理由……詳しくお聞かせ願います。少し……あなたに興味が湧いてきました」


 俺が彼女に会いに来た理由か……そんなのは俺からすれば簡単なのだが、たしかに彼女からすれば説明が必要だろうな。


「そうだな……まず俺は、少し前にこの世界に転生してきたんだ」

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