アナログレコード

振矢瑠以洲

アナログレコード

 ニューヨークではアナログレコードで音楽を聞く人が増えている,というニュースを昨年ごろTVで見てすごく印象に残っているのを覚えています。それが最近日本でも,アナログレコードの静かなブームが起きていることをTVのニュースで見ました。今欧米各地てアナログレーコードの人気の復活が起こっていて、特にアメリカでは盛り上がっていて、売上枚数約800万枚前年比49%アップ、イギリスでも2014年に購入されたアナログレコードは130万枚に達し、これは1995年以降で最高の売上枚数、日本でもこれにははるかに及ばないが、レコード生産は2009年には10万2,000枚だったのが,13年には26万8,000枚に増加した。

 このブームに関していいろいろなことが巷で言われています。CDの売れ行き減少,ネットでダンロードして音楽を聞くスタイルの増加、ハイレゾで音楽を聞く技術の急速な進化。

 この世界的なアナログレコード復活のブーム、デジタル音楽に関する様々な技術的なこと。このこととはほとんど関係なく,最近アナログレコードで再び音楽が聞きたくなりました。

 四六時中音楽を聞いて過ごしたい。場合によっては一日のほとんどを音楽を聞いて過ごしたりする。そういう年代というのは1,0代から20代前半頃ではないでしょうか。私の10代の頃の音楽の聞くスタイルは,当然のことながらアナログレコードでした。またはカセットテープでした。新曲やお金がなくてレコードが買えないけど聞きたい曲があるとき、ラジオからテープで録音する。LPのアナログレコードは,当時一枚2,000円くらいでした。中高生にとっての当時の2,000円はかなりの額で、LPレコードを1枚買うには相当の覚悟がいりました。

 さて、アナログレコードが店からなくなりレコード店がCDショップに変わっていった頃、棚に収まっていたLPレコードのコレクション処分しようかどうか考えていたけど,結局そのまま保管していたもの何枚あるか数えたことがなかった。さてこの中からまず最初に取り出したのは,ビートルズの解散後ではない唯一のベスト・アルバムOLDIES,次に取り出して聞いたのはローリング・ストーンズの当日実現しなかった初来日の来日記念盤ベストアルバムTHE ROLLING STONES ゴールデンプライス、そして3枚目にモーツァルトの交響曲をとりあえず聞いてみた。

 ビートルズのOLDIESは当時最も聞いたLPの一枚,擦り切れるほど聞いた一枚,何度聞いたか計り知れない程です。驚いたことにあの同じ曲のあの同じ部分でのかすかなパチリというノイズ,その瞬間、当時のことが蘇る気がするのです。これぞまさにアナログ、CDはデジタルデータであるのに対して、ものであると実感させられる。ローリングストーンズとモーツアルトの交響曲はノイズはなかった。このレコードプレーヤー、CDコンポに接続して聞くためにだいぶ前に買ったものであるが、今聞いてみてこんなにいい音が出るとは思わなかった。

 さて、いまこのデジタル時代にアナログレコードを聞いてみて,思いがけなく感動した。CDで聞いている時とあきらかに何か違う気がする。なんだろうか。自分でもよくわからないし、うまく表現できない。CDは何か耳から入って脳に響く感じだが、アナログレコードは体から入って、心に響いてる感じがする。

 CDは、44.1kHz/16bi、人間の耳で聞こえるのは20Hz~20kHzまでの音、高周波や超低周波等の部分をバッサリ切ってしまったのがCDの音。この人間に認識できない音が関係しているのかどうかわわかりません。最近話題のハイレゾ音源は92kHz/24ビットでこのことにこだわっているのか。でも、でもデジタル音源は最終的には0と1からなる2進法のデータ。アナログレコードはレコード版の溝に音の波がそのまま記録されている。このことが何か関係しているの私にはわかりません。いままでネットワークハードディスクをサーバ代わりにしてこの中にかなりのデジタル音源を保存してきました。ハイレゾ音源もあります。ネットワークでつながっていて、無線LANでもつながっていて、家のどこからでも聞くことが可能です。でもデータばかり蓄えてあまり聞いていません。

 アナログレコードで音楽を聞くことはとても面倒です。棚の中から自分が聞きたいレコードを探すのに時間がかかります。毎日頻繁に聞くようになったものはすぐ取り出せるようになりますが。聞きたいものを見つけたら、ジャケットからレコード盤を取り出します。CDよりかなり大きいのでめんどうです。まずビニール袋かからジャケットを取り出し、ジャケットの中からビニール袋で包まれたレコード版を取り出し、そのビニル袋からレコード盤の溝の部分に触れないようにしてレコード盤を取り出して慎重にプレイヤーにセットします。LP盤EP盤かに合わせてボタンを切り替え針を落とします。A面B面があって片面で6〜7曲入っています。A面が終わったら裏返してB面に針をおとします。こんなに面倒くさいけど、久々音楽を聞く楽しさが蘇ったような気がします。理由はよくわかりません。でも何か楽しくてやみつきになりそうです。今まで邪魔な存在だったアナログレコードの山が、一瞬のうちに宝の山になりました。

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アナログレコード 振矢瑠以洲 @inabakazutoshi

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