一日目~モンゴル到着~
ウランバートルのチンギス・ハーン国際空港には、夜遅くに到着した。
ロビーには案内のプラカードを掲げたガイドさん達が何人も待ち構えていた。きっと、自分と同じような観光客を出迎えに来ているのだろう。
「こんにちは、オーミさんですか?」
流暢な日本語が聞こえてきた。正面から、背の高いイケメン兄ちゃんが近づいてくる。おお、モンゴル美女ではないが、モンゴル兄貴の登場だ。
そのモンゴル兄貴なガイドに案内されるまま、ニッサン製の乗用車に乗りこんだ。
空港を離れた車はいつしか闇の中へと潜りこんでいった。
ウランバートル市内の夜景が、車窓の彼方にチラチラと浮かび上がってきた。
遥か遠くまで広がる暗闇の世界にきらめく生活の灯火。広大な大地に敷きつめられた首都の輝き。空港から続くデコボコ道のかたわらには、灯りをつけてゲルを組み立てる人々の姿が時おり見えた。
遠方に、オレンジ色の塔がそびえ立っている。どうも市街地のど真ん中に建てられているようだ。
「あの塔のようなものはなんですか」
「あれは火力発電所です。昔はウランバートルの市外にあったのですが、町が拡大していくのとともに、都市の中に吸収されてしまったんです。首都のど真ん中に火力発電所が二つもある国なんて、世界中探してもモンゴルぐらいじゃないですかね」
それがただの火力発電所の塔だとしても、私にはまるで幻想世界の建造物のように見えた。それほどに、塔が醸し出す雰囲気は妖艶で、圧倒的な存在感を漂わせていたのだ。
二十分ほどで市街地に入り、工業地帯や国会議事堂前を通り過ぎた後、車は今晩宿泊するホテルに到着した。
私は自分の部屋に入ると、ユニットバスのシャワーで一日の汗を洗い流した。
窓を少し開けて、部屋の灯りを消す。
ホテルの外から、夜の市内で遊んでいる若者たちのはしゃいだ声が聞こえてくる。異国の地でありながら、どこか日本の都会と雰囲気が似ている。
懐かしいような、温かいような。なんとなく、モンゴルが好きになれそうな気がした。
そのうち、長時間のフライト疲れもあって、私は夢の世界に引きずり込まれるように眠りに入っていった。
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