草原の月に教えられたこと
逢巳花堂
始まり~モンゴルへ行こうと思い立ったわけ~
これは二〇〇九年のお話である。
その当時、何十万文字もの長編小説を書き終えた私は、活力に満ち溢れていた。
「今の自分なら何か出来る!」と思えるようになっていた。
しかし、決定打に欠けていた。
確かに小説は、長大な作品を一本書き上げた。そのことは自信に繋がっていた。だが、それはあくまでも「文章を書くこと」に限った話である。
当時二十七歳の私は、まだ胸を張って「僕はこういう人間だ!」と言えるような状態ではなかった。
自分は何のために生まれてきたのか?
もちろん、そんな問いかけには誰も答えてくれない。正確には、正しい答えなんて誰も知らないのだ。
そして、夏期休暇が近付いてきたある日、突然こんなことを思い立った。
「そうだモンゴルへ行こう!」
モンゴルは自分にとって、憧れの地である。幼少時代、父が、チンギス・ハーンや草原の物語を語ってくれたのを憶えている。その一つ一つに胸を躍らせ、いつか広大なる草原の風景をこの目に焼き付けたい、と願っていた。
そんな憧れのモンゴルの地だから、きっと自分の人生観に、何か大きな影響を与えてくれるに違いない。そう信じていた。
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