第21話 ヘルムート城

アルベルトはヘルムート城から2リーグ先に馬車を止めて岩陰に隠した。

何も隠れる所が無い荒野だから、見つかっている物として行動をしていた。

「グリム、ここで待っていてくれないか?帰りの馬車を失ったら、誰も助からない。ファーナの外にも神官は捕らえられているみたいだからね。それに馬車を守る方が危険かもしれない」

悔しそうにグリムはうつむく。

「旦那様に付き従って、戦いをお助けして、手柄を立てていただくのがクネヒトの喜びですだ。着いて行きたいですだ」

「俺も本音を言えばグリムに着いて来て欲しい。だけど馬車を守る人も必要だ。こらえて欲しい。危険な仕事だけど受けてくれないかな?」

絞り出す様にグリムは声を出す。

「分かりましただ。馬車の事は任せ欲しいですだ」

「じゃぁ言って来る」

そう言ってアルベルトは歩き出した。

時間は正午。

夕方までに、最悪、夜になる前にブラックナイトを倒さないといけない。

夜は人を恐怖に陥れる。

その隙をブラックナイトが見逃すはずが無いのだ。

そんな事を考えながら、アルベルトは歩いている。

身を隠す事は考えていない。荒野で特に隠れる所は無いからだった。

ヘルムート城に100mまで近づく。

城門は開けられており、そこには2体のスケルトンがいる。

弱い力しか持たない霊が骨に取り付き、現世に力を与える能力を持っているのがスケルトンだった。だから骨を砕いても動く。しかし、人間の構造に縛られるので、腕を砕けば、腕は使えなくなるし、背骨を砕けば全身の動きは止まる。

それにしても、食料を必要としないアンデッドのスケルトンを門番にするのは賢いなとアルベルトは思う。

不眠不休で働いてくれるからだ。食べ物もいらない。寝る事もしない。存在するのは聖者への恨みのみ。城主に侵入者を知らせるなんて難しい事は出来ないが、門番としては最適だった。

スケルトンの近くは相手の魂を感じる能力のみ。

だから隠れていても仕方がない。

アルベルトはそんな雑念を捨てて、城に盾を掲げて近づいていく。

50リーグを切った。

アルベルトは左手に盾、右腕にウォーハンマーを構えて走り出した。

スケルトンは武器を構えるが、そんな事はお構いなしにアルベルトは城門の左手にいるスケルトンに全体重と速度を乗せて、盾ごと体当たりをする。盾と城壁に挟まれてスケルトンは粉々に砕け散る。右側にいたスケルトンが手にしているロングソードで切りかかってきた。単調なその攻撃をアルベルトは右手のバックラーシールドで受け流す。そのまま態勢を整えるとスケルトンの腰と背骨を繋ぐ部分を狙って、ウォーハンマーを叩きつける。

ぐしゃと言う音がしてスケルトンは動きを止める。

空いている城門に向かってアルベルトは侵入して行く。

必ずファーナを助けると心に決めて。

                                                                     

                                   続く

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