第11話 ファーナ様は恐くない?
「アルベルト殿、ファーナ様は恐く無い?」
エルザが野営地を離れてから唐突に聞いてくる。
「みんなの前で礼節に振る舞えるなら、俺の事はアルでかまわないよ。エルザ殿」
「私もエルザで良いよ」
年相応の明るさでエルザは答える。微笑みが夕日に照らされて美しさを増している。
「ではアルベルト殿、私もアルと呼びますね。私もイメルダでかまいませんよ」
「ファーナが怖いかどうかだったか?ポンポン魔法を打たれたり、叩かれたりするのは理不尽だと思うけど、それほど恐怖を感じないな。ところでこんな荒野で野草や芋が簡単に見つかるのか?」
「割と簡単ですよ。あそこの茂みとかありそうですよ」
「ファーナ様は冥界の使者である命の刈り取り手です。戦争の前に騎士達に祝福を与えて、敵の騎士達を冥界に送り込むと言う儀式を執り行ったり、ファーナ様の力で簡単に命を奪えます。豊穣のもたらし手であり、癒し手である私達とは考え方が違うのです」
「普通の女の子だと思ったけど、イメルダやエルザから見たら違う風に見えるだな」
「ロリコン」
エルザがぽつりとつぶやく。
都市部の学者が使い始めた言葉だが、アルベルトの村には届いていなかった。
「なんだそれ」
「それとも同性愛者?」
どこか嬉しそうにエルザが言う。本来、神殿の教えでは命を生み出さない同性愛は否定されていると聞いている。それなのにエルザの発言は大地母神の神官として不敬極まりない
発言になる。
「同性愛を必ずしも否定はしないが、俺はお姉さんが好きなんだ」
「だからイメルダの方ばかりを見るんだ」
「まぁ男性ですから仕方ありませんよね」
「どう言う意味よ!イメルダ」
「エルザの胸に聞いてみたら?」
イメルダがどこか弾んだ妖艶な声で言う。
「悪かったわね、これから成長するのよ」
「仲が良いんだな。2人とも」
着やすく呼び合える仲にアルベルトは感心している。
「小さい頃から2人で神殿で育てられたからね」
そんな話をしていると、3人は茂みにたどり着いた。
「蛇とがいるかもしれない。ちょっと待ってくれ。安全を確認する」
アルベルトはそう言うと盾を構えると無造作に茂みをウォーハンマーで薙ぎ払った。
特に何もなかった。
「さぁ、食べれる野草を探してくれ」
「えぇアル」
「アルありがとう」
そう言うとイメルダとエルザは大地母神に植物の採取を行う事への詫びと食事にしてくれる感謝の祈りを始めてからハーブなどを取り始める。
少し時間が立つ。
「アル、たぶん、この野草の下に芋があるんですが抜けません。力づくで抜くと折れそうです。何か道具がありますか?スコップを持って来るのを忘れてしまって」
「エルザ、ウォーハンマーを持っていて」
一応たいまつの魔法がかかっているので地面に置くと火事になる可能性もあると考えたアルベルトだった。肩から吊り下げられている鞘から、大型のナイフを抜くと、集中する。武器にシールドの剣技を使うのは間違っているのだが、商売道具である短剣を壊すのも困る。だからシールドの剣技で防御力を高めている。
堅い地面だったが、さくさくとアルベルトは掘り進めていく。
「これで抜けないかな?」
そう言いながらアルベルトは芋を引き抜く。
「大量です。これだけあれば美味しいスープを作れますよ」
アルベルトはその言葉を聞くと、短剣に書けていたシールドの剣技を解いた。
シールドに魔力の壁によって作られていた力が消えた事で土がぱらぱらと落ちていく。
「ありがとう。アル。騎士に取って短剣は神聖なものなのでしょう?」
「えっそうなの?そんなに乱暴に扱って大丈夫?」
「まぁ商売道具だし、助からない敵に慈悲の一撃を加えるから神聖なものだよ。でも晩御飯が食べられないよりましかな?それよりそろそろ戻ろう。ファーナの魔力を持ってしてもたいまつの魔法がいつ消えるか分からないからな」
「はい」
「ちょっと残念。もう少しお話したかったな」
エルザがつぶやく
「ファーナ様に冥界に送られるよ。エルザ」
「意味が分からない、イメルダ」
そう言いながら野営地に帰っていく3人だった。
続く
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