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「万理、今日は話があったの」

「オレも話があったんだ。美景、お金貸して?」

 言葉を失う。これで付き合ってから何回目だろう?万理は金遣いが荒く大抵はゲームの課金やギャンブルに使っているようだ。顔が好みなので目をつぶっていたけれど、割とダメな感じだとは思っている。

「今、手持ちがないの」

「じゃあ送金してよ」

「えーと、スマホを友達の家に忘れちゃってて」

「じゃあ、いいや。しよ」

 子猫のような悪戯な笑みを浮かべながらずいずいと顔を近づけてきて、私の髪の毛に触れてくる。アーモンド形の綺麗な目に見つめられると、動きが取れなくなってしまう。キスをしてくると分かったので、顔を背けて避けた。本当はしたかったけど。

「私ね結婚したの。だから、別れよう」

「え?」

「訳あって結婚したの。万理とは別れなきゃ」

「何で?オレのこと嫌いになった?」

 万理は首をかしげて見せる。

「好き。でも、結婚したから」

「別れなくってもいいじゃん。オレをセカンドパートナーにしてよ?」

「いや。それは、それでどうなの?」

「お金も仕事もないんだって。美景、見捨てないで」

 手を重ねられて潤んだ瞳で見つめられると、ドキッとしてしまい拒絶できなくなる。きゅるんきゅるんに愛くるしい最高傑作的な顔だ。

 ああ、惚れた弱み――――好きよ、万理。

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