落日、朧月夜に物想う

 落日は鉄塔の上に立ち、街の明かりを眺めた。橙色の大きな月が雲に隠れる。そして雲海に撫でられるようにしながら、そろそろとその姿をあらわしてきた。

 落日は今日もまた、ある少女の気配を探している。

 気ぜわしい羽音をたてながら、ハヤブサがとらつぐみを捕獲するのを眼下に見かけた。落日はあら、と思った。

久しぶりに見かけました、師匠。帰って来たのかしら?


 ハヤブサはとらつぐみをくわえて飛び去っていく。


 落日の手には、ガラスケースがある。中には見ている間にも色が変化する糸が入っていた。

「あと少しですよ」

と落日はガラスケースの中の糸に話しかける。

 独特の香りがして、落日が眼下を見た。

 あ、漠(ばく)が生まれましたね――――

 落日は百舌鳥の姿をとり、隠れ家に向かうことにした。

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