バカとバカの異世界生活

ナギさん

第1話 バカとバカ

「おい、起きろ。起きろ勇馬ゆうま!」


そんな声が聞こえる。この声は俺の親友である彼方かなたの声だ。


「な、なんだ? もう朝なのか?」


「んな呑気なこと言ってんじゃねぇ。今はどっかの森の中だ」


その言葉で俺は意識をしっかりとさせる。


「なに!? なんで森の中に!?」


「んなこと俺が知るわきゃねぇわ。俺も絶賛大困惑中だっつうの」


「う、うーむ・・・・・・彼方が分からなかったら俺はわからん・・・・・・」


俺は世間的に言うバカという部類の人間だ。俺の出来ることと言えば肉体作業のみなのだ。


「見たことのない植物。見たことのない動物。見たことのない虫・・・・・・まぁ日本じゃないのは間違いないだろうな」


「日本じゃないって・・・・・・俺たちはどうやって海外に来たんだ!?」


「そもそも海外にもこんな人を刺すために作られたような剣みたいな形の植物なんて見つかってねえわ」


「つ、つまり・・・・・・どういうことだ?」


「可能性としては異世界に来たかもしれない」


「なに!? 異世界か! 異世界ってなんだ!?」


「言うと思った。だが俺もよくわかってないから詳しいことはわからない」


「彼方でも解らないことはあるんだな」


「俺は別に神でも天才様でも無いんだ。解らないことだって滅茶苦茶あるし、解りたいって思うこともご万とある」


俺はいつも、分からないことは彼方に聞いて、それでもわからないことが多々あったのだ。だから彼方には分からない事が無いのだと思っていた。


「今はこんな森のなかでどう生き残るかが問題だ。それじゃ一つ問題を出そうか」


「お、おう、答えられる範囲で頼むぞ?」


「勇馬はどれくらい寝ていたでしょう」


「え? うーーむ、1時間くらい?」


「不正解。正解はまる三日だ」


「なに!? そんなに寝ていたのか」


「その3日間で多少生活基盤を作ったが、マンパワーが足りなすぎる」


「なるほど。つまり力仕事をしろってことだな!」


「ははは! よくわかってんじゃねぇか!」


俺の取り柄は体力。肉体作業だけだ。だから彼方にできないことが俺には出来るのである。


「お前の非常識な体力を期待してんぞ〜」


「おう! 任せろー!!」


 =====


「まずは衣食住の住からだ。お前も知っての通り、ここはどこかわからない。だから野宿は完全拒否だ」


「なるほど、危険ってことだな」


「そういうことだ。だからできるだけ早く家を作っておきたい」


どこかもわからない場所で、なんの道具もなく野宿するのは無理ゲーすぎるし、危険だ。だから少しでも早く家を作りたい。

そして、家を作る絶対条件はツリーハウス、もしくは高床式住居だ。


どんな動物がいるかもわからない。なにがあるかもわからない。そんな中、地上に家を作るのはかなり危険だ。


「ツリーハウスくらいなら道具があれば2日で出来るぞ!」


「ははは、さすがのバカ体力だ。だがここで一つ問題がある」


「ん?」


「まともな道具がない」


そう、俺たちはつい三日前にここに来た。だからまともな道具などあるはずがないのだ。だからその石器を作ることから始めなければならないのだ。


「石器はそんな簡単にできるようなものじゃない。だから地道なトライアンドエラーでやっていくしかねえわ」


「よし! そういうことなら早速練習しようじゃないか!」


「あぁ、紀元前の人間がやってたことだ。やってやれねえことはねえ!」


それから俺たちはかなりの数の石を集め、実験を繰り返していった。時間としては丸五日ほどかかってコツを掴んでいった。


「ここまでこの石を見てきてわかったことがある」


「おお! 流石は彼方だな!」


「この石の数々は、日本にもあったものだ」


「そうなのか?」


「ああ、そうだ。例えばこのチャートっつう石な」


「あぁ、そのカラフルで綺麗な石か」


「日本でもこの石はあったし、かなり硬い。モース硬度7あるクソ硬え石だ」


「モース硬度7! モース硬度ってなんだー!?」


「言うと思ったぞ。モース硬度ってのはその物の傷つきにくさだ。例に上げると、コランダムはモース硬度9、そして最強はダイヤモンドの10だ」


「やはりダイヤは硬いな!」


「まあその話は置いとくぞ。この石があるってことは、地形、気象は日本と違うかもしれない。だが、基礎は変わらないと言うことが分かる!」


基礎の基礎である石。この世は石から始まったと言っても過言ではないのだ。ということは、俺の知識が役に立つことだってあるかもしれない。


「こうなれば俺の土俵だ。どんなファンタジーだって知識で戦えるんだったら絶対に負けねえ」


「はっはっは! それなら早く家を作らないとな!」


「あぁ、知識では問題ないが所詮は人間なんだ。人体は弱いんだから、その弱さを補うものがいる。さっさと作っちまおうぜ」


「おう! 任せろー!」



それから2日ほど掛けてツリーハウスを作った。これで危険な地上で野宿する必要はなくなるし、雨風をしのげる。心の余裕っていうのは人間にとって必要不可欠であるし、仕事効率の上昇にもつながる。だから真っ先に住居を作ったとうわけである。


「さぁ、やっと一歩目だ。ここからが正念場だぞ」


「なに!? まだゼロ歩だったのか!?」


「まぁ、正確には0.5歩くらいだがな」


「まだその程度なのか!?」


「当たり前だ。そんな簡単に5歩10歩なんて行けて貯まるか。この時点で衣食住が揃ってる時点でかなり早いんだよ」


「なるほど。そうだったのか」


「あぁ。だからこれからはもっと発展的な生活基盤を作るぞ」


「おお! 次はなにを作るんだ!?」


「炭酸カルシウムだ」


「なるほど! 炭酸カルシウムか! 炭酸カr」


「ああいうと思った言うと思った。勇馬でも分かる言い方で言えば石灰、グラウンドの白線引だ」


「なるほど、あれは炭酸カルシウムというのか!」


「そのためにとにかく貝を集めまくる!」


「貝を集めるのか! だが出歩くのはかなり危険なんじゃないか?」


「ああ、だからしばらくは下準備だ」


しばらくは食料調達をとにかくする。今の状態で一番不安なのは食料であり、いつなくなってもおかしくない。


「あくまで飯は動物の肉や川魚だけだ。だからこれから一ヶ月くらいは食料調達に魂をかけるぞ」


「なるほど、了解した!」


「取ってくるなら魚とかがいい。そのへんのきのことかは流石に危険だからな」


「あいわかった! 魚を大量に持ってくるぞー!」


「あぁ、いってら」


そのまま走り去っていく勇馬であった。



 =====



そんななか、謎の人物が森の中に居た。


「なんだ・・・・・・あの家は」


不穏な空気が周囲に漂ったのである。

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