勇者パーティーの別離

そこらにいるウナギ

勇者パーティーの別離

「なんでだよ!急にパーティーから追い出すって!今までやってきたじゃねぇか!」


「もう●●は必要ない。さっさと出て行ってくれないか。」


ここはとある王国の王城。ある一室で男女3人が諍いを起こしていた。この王国は突如として現れた魔王とその眷属たる魔人族を淘汰するために、異界から勇者とその仲間たちを呼び出した。それぞれ勇者、聖女、賢者、そして能無し。この能無しは雑用として勇者達のために働いてきた。そのおかげもあって、魔王を討伐することができたのだった。


「そりゃあ、おれは何も出来ない能無しだがよ……」


「わからないのですか?勇者様はこの華々しいパーティーに能力もない雑用しかできない無能を近くに置いておく必要がなくなったのですよ。」


「■■■■……」


「さて、これは今までの退職金だ。これをもってその下賤な顔を二度と見せてくれるなよ。」


「……まて。アイツは知っているのか。」


「……あぁ。了承は得ている。僕たち3人が話し合った結果だ。」


「そうかよ。じゃあな。」


そうして、能無しは部屋から出ていこうと扉のノブに手をかけた。


「君には少し眠ってもらうよ。【スリープ】」


そこで能無しの意識は途切れた。


~~


「……ここはどこだ?」


そこは森深くのどこか。


「……俺は誰だ?」


「やぁ、目覚めたね。」


「だれだ。」


「私は▲▲。しがないの賢者だよ。」


だがこの物語はまた別のお話。それは、能力がないただの青年を圧倒的な魔術の才を持つ少女が隠れて青年の努力を見ていた……一方的な恋を成就させるありきたりな物語だ。


~~


暗い地下室の一部屋。


「……大丈夫かな。あいつら。」


「さぁ?どうでしょう。▲▲がいますしどうにでもなるでしょう。」


彼等4人は異界から呼び出された仲良し4人組だった。しかし、こちらに召喚されてからその関係は変わってしまった。勇者は一人で万軍をなぎ倒し国を落しうる力を。聖女は未来を見通し万人を癒す力を。賢者はすべての魔術を行使することができた。能無しは何もない……というわけではなく、その3人の弱点を把握し、補う力が備わっていた。王国は、勇者、聖女、賢者の力を危惧した。もしかしたら、王国が武力によって乗っ取られるかもしれないと。王国は、彼らを亡き者にすることによって安寧を得ようとしたのだ。


「今更だが、君はよかったのか?ここで死ぬんだが。」


「今更だよ。私は▲▲が●●のこと好きだったのを知っていたからね。生きて彼との人生を歩んでほしいと思ったんだ。」


「そうか。まぁ、●●は全く気付いていなかったけどな……」


「まぁね……■■■■の方こそよかったの?」


「あぁ。僕はこの手でいくつもの命を奪ってきた。でも、彼は違う。勝手な押し付けかもしれないけど生きててほしい。」


「いつか知られちゃうかもしれないけど……あ、でも▲▲が記憶いじるって言ってたっけな。私たちのことを記憶から消すって言ってたし。」


「えぇ……重くない?」


「彼女にとっては必要なことなんでしょう。」


そして、彼等はとりとめない思い出を話し続けていた。


しかし、終わりは突然に。


「おい!でろ!」


鎧をまとった人物たちが引きずるように彼らを処刑台に連れていく。


「……さよなら。来世でまた会いましょう?」


「……あぁ。そっちこそ元気でな。」


この物語はここで終わる。幸せだった彼と彼女は唐突な事によって幸せはなくなり、勝手な都合で終わらせられた。それでも、彼等は恨まなかった。思うことはただ一つだけ。


『▲▲と●●の行く未来が幸福で幸せであるように。』


そんな思いを胸に彼らの物語は閉ざされた。

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勇者パーティーの別離 そこらにいるウナギ @rein04

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