第62話 政権中枢は魔界なり②
唖然としてる信康さんを見つめる中、事態を把握した泰子さんが鬼の形相で乱入してくる
「大輔君、あの時も申し上げましたよね、許可も無くプライベート空間に土足で入り込むのは失礼ですよ! 美和子、どういう教育をしてるの!」
泰子さんがなお言い募ろうとするのを正気を取り戻した信康さんが片手で遮る事で止める
「まあ泰子待ちなさい、大輔君も座りたまえ」
「はい、失礼しました」
そう言って俺は席に座る、泰子さんも怒ることよりも信康さんが執りなした事に驚いたのか同じく席に座る事にしたようだ
「さて大輔君、どうして私が慶政会執行部に腹を立ててると思ったのかね?」
どうしてか……先程政治関連の話に興味が無かったと言ったと思うが、昭和→平成の時期に関する政治事件に関してはとある理由で無茶苦茶覚えていたりするのである
えっどんな理由?
昔お付き合いしようとした女性が報道関係者で、お付き合いする為に昭和→平成にかけての政治案件の話を勉強したとかいう理由では無いぞ、本当だからな、結果的に振られたとかも無いったら無いからな!
コホン! 話が脱線したので元に戻しますが、当時リ・クルート事件より話題性は落ちるものの、後の政治に影響を与えたという点では、この東京佐側急便事件もとんでもなかったので覚えていたのだ
「そうですね、信康さんが当時事件の中枢近くにいたのなら、金角さんが私利私欲の為だけに動いてた訳じゃないのはご存知ですよね?」
彼はまた目を見開いて俺の話に驚いてるようだ
「……君の情報源について気になるがひとまず置いておこう、当然だ、あれは竹上さんからお願いされて当時の金庫番だった金角さんが泥を被り事態の沈静化に勤めた案件だからな」
「はい、その上で今回の件で世の中に情報が出回った訳ですが、その件で慶政界の上層部辺りが、金角さん1人に責任を被せて尻尾切りしようとしてるんじゃないかと邪推した訳です」
実際にこの件で金角仁は政界から追放されるのを俺は知ってるからね
1分程沈黙を保っていた信康さんだが、息を吐き覚悟を決めたのか語り始める
「ふ〜、確かにあの案件で永田町に多額の現金が流れたのは事実だ、ワシも受け取っている」
「貴方?!」
泰子さんが悲鳴をあげるがまたも信康さんが遮る
「政治に金は付き物ですしね、ぶっちゃけますけど日本人は潔癖すぎますよ、どこの世界に金が付き纏わない政治があるっていうんですかね? まあこの言い分が通らないのはわかりますけど、こっちも洒落にならない税金を収めてる身ですしね?」
俺が暴言を放つのを驚いてる泰子さんと、税金の部分で頷く美和子さんがいる中
「ぶわっはっは、いや政界の中にいると君の言う話が真実なのは嫌というほど理解させられたよ、金が欲しいのではなく金の流れの中にいないと政治家として何も成せないとね、それを教えて頂いたのが金角さんだった」
「金角さんは執行部に従うつもりなんですね?」
「金角さんに言われたよ、当時こうなる事は覚悟していたと、金に関わった事だけじゃ無い、今回は暴の付く団体も絡んでいるからな当然の事だと言われたよ」
「でも貴方は納得できないと?」
机をダン!と叩く信康さん
「当然だ、あの件で何もせずに利益だけ吸い上げてヌクヌクしていた現執行部の人間がどのツラ下げてあの時泥を被った金角さんを非難出来ると言うのだね!」
やはりこれが事の原因だったか、そりゃあ兄とも師とも仰ぐ人間がコケにされて黙ってる人じゃ無いよな〜、だけど……
「その話を聞いた上で言いますよ、貴方こそが積極的に金角さんを非難して利用すべきです、執行部に手柄を独り占めさせちゃいけませんよ」
「何だと!」
怒り狂う信康さんを平然と見返す、さてどうなっちゃうんだろうねこれ?
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