第15話 駿馬との出会い③

 俺と小次郎は永浜牧場事務所に飛び込み、駆け込み一番


「牧場長、テイオーを売ってくれ!」

「お願いします」


 その時お茶を飲んでいた牧場長と美和子さんと顧客の斉藤さんが、飲んでたお茶を思わず吹き出した


「ゴホゴホ、ちょっと大輔君、一体何事なの?」


「ゴホゴホゴホ、テイオーを売って欲しいだって〜!」


 皆が混乱する中、俺と小次郎は懸命に説得を始める。


「凄い頭の良い子なんだ、きっと凄い走るよ!」


「一見ひ弱そうに見えるけど、走るのが好きそうだし、何より動きが素軽いあれは天性の才能だと思う」


「ちょっと落ち着いて2人共、いきなり馬を買いたいだなんて?」


 牧場長と斉藤さんもとりあえず宥めようとする


「馬を買うと言ってもだね、そんな文房具を買うみたいな訳にはいかないんだよ?」


「そうですね、ピンキリとは言え家を買う位のお金が必要になる」


 話を聞いた小次郎が落ち込むが、俺がすかさず


「即金で億までなら俺の個人資産から出します!」


 俺のセリフを聞いた小次郎は喜ぶが、2人は驚愕して空いた口が塞がらないようだ、頭を抱えた美和子さんがとりあえずその場を落ち着かせようと


「確かに大輔君なら買えるけど、馬主というのは簡単になれるものじゃないわよ?」


 実際買えると聞いて、更に混乱する2人を他所に、俺と美和子さんは具体的に話を詰める。


「わかってる、だからネクストの、会社の馬にして欲しい、対外的には馬主は美和子さんにお願いします」


「確かにそれなら可能ではあるわね」


「来年一部上場する際、会社の知名度にも大きく貢献すると思う」


「成る程、それは大きいわね、でもそれは本当に大きいレースに勝った場合よ?」


 大丈夫? と俺を見る美和子さんに俺が苦笑して頷く、それで美和子さんは察したらしい


「は〜、それなら現オーナーにアポを取らないとね!」


「本気ですか!?」


 驚く2人を説得した美和子さんが話を纏めて1週間後、トーカイの冠を持つオーナー外村氏と話し合う事になった



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふむ、テイオーを欲しいという事じゃな?」


 1週間後、俺と美和子さんの2人は東海地方で有名な懐石料理の店で、テイオーのオーナーの外村氏と会食中です。


「はい、私の2人の息子が一目見てベタ惚れしたみたいで」


 そのセリフを聞いた外村氏が俺をニヤリと笑いながら見つめる。


「坊主、テイオーは言うなればワシの孫のようなもんじゃ、その孫に坊主おぬし、即金で億まで出すと言ったらしいの?」


 ニヤニヤする好々爺を前に、俺は後ろの襖を開ける


「とりあえず現金で2億用意したのでご確認下さい」


 背後の現金を見て流石に唖然とする爺さん


「足りないなら後1億までなら用意しますけど?」


「ほ、本当に坊主の個人資産なのかね?」


「はい、現在高校生という事で運用面の問題で会社を通してますが、彼が稼いだものです」


 美和子さんの説明を聞いた爺さんが、また大笑いし始める


「ワハハ、大した坊主じゃ、坊主8000万でいい、それでも市場価格の倍ぐらいであろう良いか?」


 俺は丁寧に頭を下げ


「有り難うございます」


 礼を言うのであった。

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