間話九 とある男達の憂鬱

「は〜……」


 仕事中思わずため息が出る


 私の名前は岡崎康二、28歳独身、大手出版社に勤めるナイスガイだ

仕事も順調、上の覚えもめでたい、順風満帆な生活をおくっているのだが……


 私には1人気になる人がいる、弟の友達の母の美和子さんだ


 私が初めて会った時は既に旦那さんを亡くし、女手1人で2人の息子を立派に育てていた、そんな所も素敵なのだが、初めて見た時から電流が流れた様に恋に落ちてしまったのだ、一目惚れである


 弟の友達である大輔と仲良くなり、美和子さんへ積極的にアプローチしようと試みるも、既に別の方と交際してると聞き落ち込みもしたのだが、どうやらそいつがクソ野郎だった事で別れたそうだ


 俺は欣喜雀躍し積極的にお近づきしようとするものの、同時期に仕事の方が忙しくなり、年に数回しか会えなくなってしまったのだ


 その間に彼女は勤めていた会社を辞め自分で会社を立ち上げ、あっという間に成り上がり、たった2年で急成長する投資会社のCEOになってしまったのである


 格差婚なんて自分は気にしないと思っていたが、流石に差がつき過ぎである、彼女もそんな事気にしないのはわかっている、しかし自分にもプライドというものもあり、ウジウジとしている内に何と別の男が彼女に近づいていたのである、奴の名は山名晴彦


 弟の同級生の父親である、イイとこのボンボンだったらしいが奴も奥さんを亡くし、その後実家が没落、苦労してるとこを大輔の奴が同級生を救う為面倒みたとの事、その際に美和子さんと知り合い、奴は美和子さんに惹かれたのだろう


 だがちょっと待て、俺の方が知り合ったのが先だし俺の方が彼女の事を好きだと自負しているのだ、負ける訳にはいかん、だがどうすれば良いのだ


 今日も悶々とする日を送るのである



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 私の名前は山名晴彦、34歳現在は独身、5年前に妻を亡くし男手1人で2人の子供を育てて来た、しかし一昨年本家が破綻した際に巻き込まれて実家も破産

あれよあれよという間に貯金も尽き、仕事を探そうにも実家で裕福な暮らししか知らない自分は何も出来ずにいた


 そんな時息子が倒れたのだ、どうして良いか右往左往している中、息子の同級生だった風間大輔君が手を差し伸べてくれたのである


 自分にもネクストの深夜警備員という仕事を斡旋して貰い情けないながらも縋り付く事に

その後生活も安定して子供達の顔色も良くなり彼には感謝しても仕切れない程の恩を受けた


 だが大輔君に甘えるばかりではいけないと一念発起し、昔大学で齧っていた経験から来年の司法試験を受ける事にした


 その際に彼の母親を紹介して貰う事になったのだが、初めて会った時、全く姿形の違う彼女に妻の面影を感じ思わず目を擦ってしまった


 その後美和子さんと知り合って行く内に彼女にどんどん惹かれる自分に気付いた、しかし彼女は事実上自分の雇い主である


 悶々としていると正月に彼女の知り合いが彼女に惹かれてる事に気付いた、奴の名は岡崎康二


 その時初めて自分の内なる欲望に気付いた、コイツに彼女を奪われてなるものか!


 来年、司法試験を1発で必ず突破して彼女に告白するのだ、負けてなるものか


 そうやってまた1人の男が彼女に思いを寄せるのである



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「は、母さんに近づく男がいたらどうする? 煮て焼いて食ってやるけどそれが何か?」

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