第五十九話 雨降って地固まる

 青春漫画のワンシーンを切り取った様な流れに固まってた俺は、意識を取り戻しとりあえずは誠司に説教しておく


「このお馬鹿、よりによって早苗にラブレターの件伝えるとは阿呆か!」


「えっ、何が駄目だったの?」


 しまった、こいつ恋愛オンチだったわ、早苗への近づき方で察するべきだった!


「あいつらああ見えて両思いなんだよ、察しなさいな」


「えええ〜〜!」


 やはり気づいてなかったよ


「反省は後だ取り敢えず早苗を探すぞ、行こう」


「わ、わかった」


 俺は誠司を引き連れて教室を飛び出した



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ようやく2人に追いついたが、何故か組手の最中だった


「なんで追いかけて来るのよ、ほっといて!」


 早苗の本気の突きを健太が交わしながら


「そういう訳にはいかない、伝えなきゃいけない事があるんだから」


 早苗との組手争いの中、健太が語りだす


「最初はなんて面倒な人だと思ったよ、腕がいいけど喧嘩っぱやいし、お淑やかと思ったら実際は正反対の性格だし」


「何よそれ〜」


 おい、追い込んでどうする! 早苗完全に涙目じゃね〜か


「でも優しい所があって、本当は寂しがり屋だったり、でも凄い可愛い所もあって」


 おやおや今度は早苗の奴どんどん顔が真っ赤になっていく


「それに他の人からラブレター貰っても困るよ、だって好きな子が別に居るんだから」


 馬鹿、ラブレターの件をここで蒸し返すなよ、案の定早苗の顔が見る見る曇る、慌てた健太が焦ってはいたがとうとう大事な言葉を口にした


「……えっと天童早苗さん、知り合っていく内にどんどん貴方に惹かれていきました、貴方の事が好きです、付き合ってください!」


 よっしゃ、健太の奴正面突破しやがった! 早苗が見る間に真っ赤になり涙が溢れ出す、健太がオロオロ困った様になっていたが、再度早苗が健太の正面に立つ


「岡崎健太さん、知り合ってから色々ありましたね、最初はなんて嫌な奴と思ったりしました、でも知り合っていく内に貴方の優しさと誠実さにどんどん惹かれていきました、私もあなたの事が好きです、よろしくお願いします」


 お互いようやく笑顔になり握手しました、これ以上は野暮なので誠司の肩を叩きお暇する事にします


 少し離れてから誠司が少し微笑みながら


「良かったね〜」


 俺も同意だけど少し気になったので誠司に聞く事にする


「良かったと俺も思うけど、誠司は早苗の事好きだったんじゃないか?」


 そう最初に早苗に近づこうとして無茶やってたからな


「うんお近付きになりたいと思ってた、憧れてたんだと思う、でも2人が付き合うってなって1番最初に感じたのが良かったって感情だったからこれで良かったんだよ」


 ちぇっ、いっぱしの男の顔になりやがって、俺は誠司と肩を組み


「よし、2人の門出を祝してこれから2人で学校サボってファミレス行くぞ、俺の奢りだ!」


「え〜〜!」


 そうやって困った顔した誠司を連れてサボりに行きました

良かったな2人とも


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「でも健太にはこれの方が似合うわよ!」


「いや早苗の方こそこっちのスポーツタイプが似合うんじゃないか?」


「え〜そうかな〜」 「あはは」 「うふふ」


 翌日2人が付き合う事を知らされた訳だが、あれからずっとこんな感じでイチャイチャしてやがります、俺と誠司がブチ切れるのに2分も掛かりませんでした


「「いい加減にしろ!!」」

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