未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す

第二十三話 赤い怒り②

　4月も半ばを過ぎ、現在必死になって作曲に取り組んでおります

学校では居眠り上等、学校が終われば健太を連れ立ってすぐスタジオへ突入

ミーコさんに教わりながらシンセサイザーの取り扱い方と作曲の基礎を学んでおります

「ミーコを拘束するんじゃね〜よ、曲の練習が止まっちまうだろ！」

「うっさい、スポンサー権限です、そこに居る中学生にギターの基礎でも仕込んどいて下さい！」

「！！」

　最近はいつもこんな感じです、昴さんのお小言も半ば挨拶みたいなもんです

　ケイさんはそのままドラムの練習を続けていますね、あれ環さんはそのままバッグから小説を取り出し読み始めましたよ、音は気にならないみたいですね

　こんな状況が夜遅くまで続いています、ひとまず曲のほうも来月の頭辺り完成出来そうですので、一度披露しますか

　帰宅後、ご飯はちゃんと用意されていますね、美和子さんも忙しい中感謝

ここ最近はこんな感じでハードスケジュールをこなしております

　そうそう株式の方ですがSomy株を2600円付近にておよそ3万株程押さえておきました

　ネクストでも一押しで勧めてるようです、会社の業績のほうも追加スタッフが頑張ってるらしく今季の売り上げは既に1億を超えたとの事

　全てが順調に思えたのですが、好事魔多し5月に入り大問題が発生しました

「すげ〜、声が綺麗〜」

「ほんと、以前のガラ声とは全然違う」

「これなら以前の曲も流行そうですね〜♪」

コクコク

　はい、本来なら歓迎される事態なのですが問題大有りです

　新曲『逆境』に必要なのは最初の頃の濁声の進化した先にあるものなのです

まさか普通の良い声に矯正されてしまうとは、向こうの方にも顔を出すべきでした

「はいストップ、問題発生です、本日の新曲発表は中止にします」

「「「「え〜〜〜？！」」」」

「自分は明日からボイストレーニングの方に一時的に合流しますのでこちらは皆でよろしく」

「ちょっと待った、先に納得する説明をしろ」

「「「そうだ、そうだ」」」

「は〜〜っ、……説明します、新曲に欲しかったのは極端に言うと元の濁声のほうだったからです」

「「「「なんだって〜〜〜？！」」」」

「正確に言うとあの声の進化した先にあるものです」

「でもせっかく歌が上手くなったのに勿体ない」

「では皆に聞きますが、由佳さんの以前の声に魅力はなかったですか？」

　全員がダンマリする、そりゃそうだ本当にダメならボーカルを替えようという話があった筈だ

　確かに濁声だったが、あの声には不思議な魅力があった、自分がすぐに『逆境』を思い描けたのも未来の歌姫の系譜だとわかったからだ

「仕切り直しです、残り1ヶ月ですがまだ取り返しはつきます」

　ここからが本当の勝負ですよ