第三章 備えよ常に

第十四話 難敵現る①

「やあ!大輔、元気してたか」


この爽やかメガネが岡崎康二、現在26歳健太の兄である

2人兄弟の長男で優秀な成績で高校卒業後、東京大学に一浪の末合格

現在最大手の出版会社でバリバリ働いている


未来においては、同会社の専務取締役まで上り詰めC市における立身出世の鏡と言われるほどの人物である


俺も世話になったし信頼もおける人なのだが、中身は冷徹陰険、いざとなったら清濁合わせ飲むインテリヤクザの様な人でもあるのだ


「兄貴、今日は大輔を呼び出してなんの用?」


健太は兄ちゃん大好きっ子だが今日は警戒してるな

この人実は意外に渋ちんである、健太もそれを知ってるので高級レストランで奢りという状況に警戒してるんだろう


「少し落ち着きなさい健太、先にとりあえず飯を食ってからにしよう」


俺も久しぶりの高級ランチ、その提案に頷きとりあえず飯を食ってからにする事にした……


飯も食い終わり珈琲タイムの後、康二さんが本題に入る


「実は、大輔には礼を言わなくちゃいけなくてな」


「えっ、何の事?」


俺の前に1通の封筒が差し出される、中身はNTDの株券2枚だ


「え〜っ、何で康二兄がNTDの株券2枚も持ってんの?」


「実は健太からお前と投資の勉強をしていて、NTDの株がお勧めって耳にしてな」


健太が渋い顔をしてるな、確かにNTDの件は隠してなかったし俺も迂闊だった、まあバブルの件さえ秘密にしているのなら何の問題もない


健太が約束を破るなんて考えられんしな


「でも320万は結構な負担だよね、ケチ…失礼、倹約家の康二兄にしては随分と思い切ったね?」


「おい、隠せてないぞ、全く……それも例の馬券の一件でだ」


「えっ、もしかしてだけど康二兄馬券も買ったの? 渋ち…失礼、守銭奴の康二兄が?」


「悪化してるじゃねーかこの野郎、本当にお前は」


「でもよく思い切ったね」


「ちょっと前までハナタレ坊主だったお前が、突然200万馬券一点買いだぞ!何かあるって思うだろそれは」

「とりあえず20万ほど相乗りさせて貰ったよ」


「その金でNTDの株も買ったんだね、で本題は何?」


「出来れば俺も組ませて欲しい、この株券は契約書がわりだ」


へ〜、随分と俺を買ってくれるんだな、少し前なら一考の余地もあったかもしれんが、それは今は無理なんだよな〜


俺はおもむろにポケットから名刺を取り出す


「改めまして私、投資コンサルティング会社ネクスト、投資アドバイザー担当の風間大輔です」


とりあえず先制攻撃を仕掛けてみますか!

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