私は等しく等価に・・・カエル
フィガレット
第1話 私は等しく等価に・・・カエル
夢を見た。
虹色の砂嵐の中にいる様な、渦巻いている様な、流されている様な・・・。
とても形容出来ない。
まるでヘドロの中にでもいるみたいに体の自由が効かない。
視界はまるで、ただの刺激であるとも思えた。
そんな中で、声を聴いた。
『占ってあげようか?対価は貰うがね』
声といって良いのかも分からない。
意味が伝わり、それを認識する為にこちらで言語に置き換えている感覚。
当然、思い当たる相手もいなかった。
私は意味を理解しようとする。
そして疑問に思う。
問いたい、という願いがそのまま意味になり相手に伝わる。
「対価とは?」
『等価交換だ』
「何を占う?」
『消えない方法』
「拒否すれば、私は消える?」
『是』
消えたくなかった。ただそれだけしか、解らなかった。
消えない事の等価とは?
新しい思考が生まれる。
私が消えない事で消える存在がいるのだろうか?それは嫌だった。
『消えない事で生まれる存在もいる。消えない事で消える存在もいる。対価は等価だ』
私の命に丁度釣り合う等価とは一体なんなのだろうか?
「それは決まっているのだろうか?」
『それは決まっている。等しく価値のあるソレを頂く』
「私が消えない事で、困る存在がいるのではないだろうか?」
『非』
・・・
「では・・・お願いします」
私は・・・消えたくなかった。
『一つ、持っていく事を許そう。何を持っていく?』
たった一つだけ。それ以外は全て失うのだと言う。
大切なモノは沢山あった。しかし・・・。
・・・
悩んだ、が時間もそれほど許されてはいない様だ。
私は決めた。
「今のコレを持って『い』きます」
『ソレは初めてだ。だが可能、面白い。楽しみにしている』
『右に行きたまえ。左は消える。右に進めば・・・』
私は必死で右へと進んだ・・・。
******。。。...
私は生きた。
精一杯に生きた。
そして、消える。
...。。。******
『おかえり』
「ただいま。素晴らしい人生でした」
『では、それを対価として頂こう』
「コレのおかげで、私はとても幸せでした」
『なぜ故に?』
「私が消えない事で、困る存在がいない事を知っていたから・・・」
『そうか。それはとても面白い』
「私の生きたソレが対価だったのですね」
『是。等しく等価。素晴らしいソレをありがとう』
「私からも感謝を。本当に素晴らしい人生でした」
『貴方のソレは、一般的に素晴らしい幸せとは言い難い』
「ソレでも私は幸せでした」
『そうか・・・。それは素晴らしい事だな』
「だから貴方に伝えたい。ありがとう・・・と」
『私からも伝えよう。対価は頂いた。ありがとう・・・と』
私は消える。否、カエル。変える。代える。換える。孵る。帰る。還る。
『ソレは等しく無価値である。だが、意味はあった」
遠く遠く遥か遠く、耳元でその声を聴いた。
私は等しく等価に・・・カエル フィガレット @figaret
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