第2話

「国王陛下の御成りー!」

という声と共に国王陛下と王妃様が会場に入場した。


国王陛下の登場に会場の参加者たちが一斉に頭を下げる。

勿論私も。レオン殿下に抱き寄せられていたマリアさんも、殿下を引きはがし頭を下げる。

臣下の礼をとっていないのは、レオン殿下ただ一人。


「これは何の騒ぎだ?」


陛下がどれだけの贅沢を享受してきたのかは、立派に膨らんだお腹周りから想像できる。

そのうえ陛下の歩き方からも凡そ風格というものは感じられない。

陛下を見ているとレオン殿下の父親だというのが容易に想像できる。


「聞いてください父上! この女が俺のマリアに嫌がらせをしていた! この女との婚約を破棄する!」


と国王陛下相手にも変わらない態度を続けるレオン殿下。


「駄目に決まっているだろう」


とあっさりと告げる陛下。


「へ? 父上……?」


てっきり了承を貰えると思っていたレオン殿下は陛下の言葉を理解できないでいる。


「エヴァンス公爵家から金を搾り取れなくなるではないか」


とわたくしと殿下の婚姻の政略の意味をあっさりとこの場で言ってしまう陛下。

普通こんな場で言うこと?


「そんなの知らない! 俺は好きな奴と結婚する!!」


「だいたい余に対して生意気だぞ。たかが息子という分際で」


どっちもどっちなんですよね。

本当によく似た親子ですわ。


「お前、もう廃嫡。そしたらお前に充てられてた金は余のもんだな」


と何の感慨もなく唐突にレオン殿下に廃嫡を告げる陛下。


「国王だからって俺より偉いのか! 父上こそ退位すればいい! そうすれば俺が国王だ!」


自分で国王が偉いのか聞いておきながら、自分が国王になるって宣言する。

その理屈がイマイチよくわからないんですが……

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