はじまりの後

水上絢斗

第1話 はじまり

 始めるけど、続かないんだ。最初は楽しいよ。何もかも新鮮しんせんだし、ドキドキもあって、だけどその後が続かない。マンネリになっちゃう。きっぽいんだろうな。悪気わるぎはなかったんだけどな、今の関係にきないように、付き合っちゃいけないって、ちゃんと心のどこかでブレーキをかけてたんだから。


「だから、お前水かけられたんだよ」

「なんで?」


 カフェで同期の橋本航はしもと こうに、相談するとあきられて言葉が返ってきた。

「わざわざ、こんなところに呼び出しされて何の相談かと思ったら。それかよ」

「それって、こちとら大変だったんですけど」

「当たり前だろ、彼女いんのに合コンに参加して、人数のわせだって言い訳して、挙句あげくてには今の関係にきないように遊ぼうとしたって。よく、ビンタされなかったな」

「やっぱダメ?」

「考えても分かるだろ。バレたら、終わるって」

「でも、本気じゃないんだけどな。ちょっと、遊びに行くだけで十分だったんだ」

「それがダメだって。なんで彼女と行かないんだよ。だから、水かけられて振られたんだろ」

「はい。だって忙しそうにしてたから。余計な気を遣ってしまった」

「気を遣うとこは、そこじゃねぇよ」

 ホットのカフェラテが俺の心をいやしてくれる。ここでは、それだけが俺の味方だ。

月本つきもと、お前もいい歳なんだから分かれよ。お前だって、彼女が合コン参加したり、他の男と遊びに行ったら嫌だろ」

「まぁ、友達だったらいいんじゃね。程度ていどにもよるけど」

「お前とはマンネリだからって言われたら?」

「しょうがないよな。俺にきてるってことだから。どうしようもないね」

 恐る恐る、橋本にもう一度問いただしてみる。

「やっぱり、マズかった?」

「マズいっていうか、ダメなものはダメ。まぁ、そんなに好きじゃなかったってことだよ」

「俺には恋愛は向いていないのかな」

「一度、休んだ方が良いな」


 事の発端ほったんは、こうだ。付き合っていた彼女との出会いも合コンで、付き合うまでは良いんだけど、その後が同じになってしまって。お互い仕事もしているし、マンネリを感じつつも楽しくやって、久しぶりに会ったら、なぜか合コン行ったことがバレて水をかけられ、みごとに振られた。


 月本つきもと みのる、同期にいい歳して分かれよと説教された情けない社会人だ。学校で教えてもらえなかったことを、社会に出て学んでいる。実践じっせんとぼしいのか、経験があまり無いためか、分からなくて失敗だらけだ。いたって、真面目まじめだ。いや、そのはず……。


 ただ、この話には続きがあって、怖くて橋本には話せなかったんだけど。





























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