第34話
「おはようってどうした思い悩んだような顔して」
「また昨日みたいに後で話を聞いてもらっていいですか?」
俺がなるべく周りの生徒たちに聞こえないように小さい声で尋ねると、真剣な口調で分かったと短く返し前に向き直る。
この前話しを聞いてもらった時と同じようにお昼休みの時間になりグランドの他の生徒にはあまり目につかないベンチに2人で座る。
俺は鈴原から聞いた話を一通り進藤に話す。
「なるほどつまり篠崎の友達の鈴原ってやつに紅葉が俺たちが知らない間に近づいてたってことか」
「そうですだから早くしないとモタモタしてたら鈴原さんのでたらめな噂が学校に広まる!」
「まあ一旦落ち着け」
「でも!」
「でたらめな噂に頭を悩ませる友達を助けたいっていうのはわかるけど、何の考えもなしに行動したところでどうにもならないだろう」
「そうですね、少し冷静じゃなかったかもしれませんありがとうございます」
俺がそう言って軽く頭を下げると進藤が小さく笑い声をあげる。
「俺何か変なこと言いました?」
「いやいや悪い悪いそういうわけじゃないんだ」
「ただ篠崎でもそうやって怒ることがあるんだなと思って」
「まあとにかく情報を集めてみようぜもしかしたらその犯人か持って疑ってるやつも誰かから又聞きでその情報を聞いただけかもしれねえし」
次の日。
昨日の夜生徒たちが普段投稿してくる前の時間にゆっくりと学校で情報交換をしようということになり俺は少し早めの時間に家を出る。
と言っても普段はこれよりもっと早い時間に出ているので特に問題はない。
学校の門をくぐり周りを見渡してみるとグラウンドには誰もおらず早く投稿してきた他の生徒たちは自分たちのクラスに入って会話をしている。
「早く着きすぎちゃったかな?」
あんまり待つのも逆に申し訳ないかと思いいつもよりだいぶ遅い時間に投稿してみたのだがそれでも早かったようだ。
どうやって時間を潰そうと考えていると。
「よう思ってたより来るの早いんだな」
俺の背中に声をかけてきたのは進藤だ。
「少し待ったか?」
「俺もたった今来たところなので気にしないでください」
俺たちはグランドにある昨日と同じベンチに座り話すことにした。
「昨日の夜俺の何人かの知り合いに紅葉のことについて聞いて色々調べては見たんだが特に大した情報は手に入らなかった」
「そうですか俺も昨日の夜SNSで何か情報がつかめないかと思って調べてたんですけど全くダメで」
「手に入った情報って言えばいつのまにか紅葉の親衛隊ができてたことぐらいで」
「紅葉さんの親衛隊って何ですか?」
「俺も昨日友達に聞くまで全く知らなかったんだけどあの女子生徒のトイレの事件があってから男子生徒たちが勝手に親衛隊っていうのを作って紅葉のことを守ってる」
ここ最近は紅葉に会うことがなかったので知らなかったがそんなことになっていたのか。
でも確かに男子生徒の中でうちのクラスでファンみたいな生徒は何人かいるので被害が及ばないように親衛隊というのを作ってもおかしくない。
「もしそれが本当なら有名人の護衛かよって突っ込みたくなるけどな」
「それに紅葉と話すときはその周りで守ってる男子たちに許可を取らなきゃいけないっていう謎ルールまであるらしいぜ」
「それはずいぶんと警備が万全なんですね」
俺は若干引きずった笑いを浮かべ言葉を返す。
「そういえば少し前にSNSで情報を調べてた時ひとつのアカウントから変なメッセージが届いたんです」
俺は制服のポケットからスマホを取り出しSNSを開いてそのDMを見せる。
「この文章を見た上で考えると噂を流した超本人にも俺たちが噂を流したやつを探しているのを知っていてこんなメッセージを送ってきたのかとも考えられるけど」
進藤が真面目な口調で言う。
「つまり俺たちは紅葉さんの手の中でただ踊らされてただけってことですか?」
「それは分からないだけどもしこの噂を流してる本人がそのDMを送ってきたんだとしたらその可能性が高い」
「他の生徒たちも学校に登校してきたみたいだから俺たちも自分のクラスに向かおうぜ」
もやもやした気持ちを抱えながら言われた通り自分のクラスに向かう。
廊下を歩いていると俺は1人の女子生徒とぶつかってしまう。
「あ!」
「すいません大丈夫ですか?」
ぶつかった衝撃で制服のポケットからスマホが落ちてしまい偶然画面が目に入る。
「私もすいませんでした」
女子生徒は言って地面に落ちたスマホを拾い自分のクラスに向かう。
その日の夜。
SNSで何か情報を集められるんじゃないかと調べていると学校の廊下でぶつかった女子生徒のスマホ画面を思い出す。
その女子生徒のスマホ画面に映っていたユーザー名を入力する。
するといくつかの投稿が表示される。
「これって!」
その投稿のリンクをコピーし進藤に送る。
その後すぐさま電話をかける。
「もしもしどうした?」
「もしもし、たった今送ったメッセージのリンクを開いてもらってもいいですか?」
「これだな」
「これって!」
どうやら送ったリンク先に飛んだようで電話越しにさっきの俺と同じように驚きの声をあげる。
俺はたまたま女子生徒とぶつかってしまいその女子生徒のアカウント名を入力したらこの情報が出てきたことを説明する。
「もしこの情報が本当だとしたら俺に冤罪をふっかけてきた金井と紅葉が手を組んでたことになるけど」
「とりあえず本人にそのことについて聞いてみるしかなさそうだな」
「それが真実かの確認が取れたら紅葉に直接話を聞きに行こう」
次の日。
ホームルームが始まる少し前の時間に隣のクラスに行く。
「昨日俺と肩がぶつかった女子生徒の人いますか?」
こんな曖昧な呼びかけで本人が出てきてくれるかどうかわかんなかったが名前がわからないので仕方がない。
すると1人の女子生徒が若干の疑問を含んだ口調で返事をし俺たちの方へ向かってくる。
「このSNSの投稿ってあなたがしたものですよね?」
女子生徒の表情が驚きの表情へと変わる。
女子生徒に小声で尋ねる。
「そうです」
「この投稿に書いてあることは本当のことなんですよね?」
「あの事件が起こる前の日紅葉さんと金井さんが2人で話しているのをたまたま聞いてしまって」
「すいませんあのことわ仕組まれたことだって分かってたのに怖くて言い出せなくて!」
「いいえちゃんと教えてくれてありがとうございます」
俺はもう一度お礼を言った後自分のクラスに戻る。
「それでどうだった?」
「進藤さんが考えていた通りあのことは事実だったみたいです」
「今日のお昼休みにいよいよ本人に訪ねてみるか?」
「紅葉さんの親衛隊を名乗っている人たちがやすやすと俺と話すことを許可してくれるでしょうか?」
「どっちにしろこうなっちまったらもう動くしかないだろう」
「進藤さん!」
「紅葉さんのところへは俺1人で行かせてくれませんか!」
いきなりの提案に驚いているようではあったがこう言葉を返してくる。
「篠崎が俺にわざわざそう言ってくるってことは何かしらの考えがあるんだろう」
「だったら俺は何も言わないよ」
「ありがとうございます!」
俺は深々と頭を下げる。
散々甘えておいて今更だけどもうこれ以上進藤を巻き込むわけにはいかない。
ここから先は俺1人でやる。
紅葉の親衛隊の中におそらく前に熱を持って色々と語ってきた同じクラスの男子生徒も入っているだろう。
そういうやつらが守っていると考えると説得するのに少し骨が折れそうだ。
だからといってこのままにしておくわけにもいかない。
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