第28話 空席の目立つクラス
教室内を見回すと、あちこちに空席が目立っている。昨日とは別の景色を見ているかのようだ。
自分の手を汚すことなく、五年越しの復讐は順調に進んでいる。あと数カ月もすれば、目的を完全達成できる。そのように考えると、学校生活は悪いことばかりではなかった。無視を耐え続けた苦労は、ようやく報われようとしていた。
どんな展開になっても、同情心は一ミリも芽生えることはない。いじめをした人間は、地獄に落ちればいいと思っている。
「文雄、おはよう・・・・・・」
「みなみな、おはよう・・・・・・」
南はクラスを見回す。
「今日はやけに人が少ないね」
「そうだな・・・・・・・」
生徒の人数だけでなく、机の数まで明らかに減っていた。処分を受けたものの中に、自主退学を決意した生徒は相当数いるらしい。
文雄の視界に、御手洗翠が映った。無視をされるまで、南以上に親しくしていた女の子。口数はほとんどないけど、他人に対する思いやりは強かった。それだけに、無視に加担したのはびっくりした。どんなことがあっても、彼女だけは味方してくれると思っていた。優しそうに見える女にも、二面性はあるのかなと思わされた・・・・・・。
文雄は席を立つと、翠のところに向かおうと考える。南は見透かしていたのか、肩に手を乗せた。
「教師の話もあるから、あんまりかかわらないほうがいいよ。こちらからであっても、処分の対象になるかもしれないし」
「それはあるかも・・・・・・」
「文雄は高校を卒業するまで、誰ともかかわることはできないの。つらい事実かもしれないけど、受け入れていくしかない」
誰からも邪魔されない代わりに、誰とも話してはいけない。中学校時代までよりも、より厳しい状況となっている。
「みなみな・・・・・・」
「私でよければ、いろいろと力になる。困ったことがあったら、すぐに連絡してね」
南と話をしているときに、「アイドルちゃん」が教室に入ってきた。前回のこともあってか、異様な雰囲気を醸し出していた。
「みなさん、おはようございます。今日は連絡があってきました。亜美さんは来週から、沖縄の高校に転校することになりました。今日からは新しい学校に行くための準備をするので、ここにはもう来ません」
疫病神は学校を去る。クラス内の雰囲気が、ちょっとくらいは良くなることに期待を抱いた。
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