百合ゲーに転生したTSメイド、主人公のカップル成立のために奮起す
麻莉
プロローグ
第1話 百合好き男、主人公のメイドに転生
「アイナ様、そろそろお時間ですよ」
部屋に入ったメイドの
黒髪のロングヘアに、多くの女性を虜にしてしまう魔性の翡翠色の瞳。寝返るとパジャマからは、真っ白な肌が見えてしまう。
画面の向こうにいた推しが目の前で無防備な姿で眠っている。
推しの寝顔を見れるのはファンとして昇天するレベルのご褒美。このまま死んでもいい。
ダメだ、一回死んでいるんだ。もう一回生き返る可能性はないに等しいと考えるべき。
「スクショ機能があれば、いいんだけどな〜」
以前の男であった私なら、絶賛就寝中のアイナール・ブルゲリアンのスクショを容量いっぱいに撮っていた。しかし、今の私にはお手軽画像作成を持っていない。なので、数分だけ目を凝らし、脳内に刻み込んでいた。
私の主であり、ブルゲリアン王国の第一王女でもある、アイナール・ブルゲリアン。僕が前世で寝る間も惜しんでプレイしていた百合ゲーム『リーリウム・オスクルム』の主人公。愛称として、アイナとプレイヤー間で呼ばれている。
百合ゲームとは、女性同士が仲良くなり、最終的には結ばれる過程を楽しむゲーム。
男が女性カップルが成立する姿をおって楽しいのか? だって、勿論楽しい。
男女の恋愛よりも断然、こっちのようが萌える。
同性同士だからこそ、もどかしく、ドキドキが止まらない快感がやめられない。
そんな百合ゲーに人生を捧げていたのが前世の僕が熱中していたのが『リーリウム・オスクルム』。
主人公であるアイナール・ブルゲリアンがヴィクトール学園に入学し、三年間の高校生生活を送りながら、ヒロインの女の子と恋人になるのが主なコンセプト。世界観的には現実世界とファンタジー世界がうまいこと融合した世界となっている。
百合ゲーの主なジャンルはノベルゲーなんだけど、『リーリウム・オスクルム』は戦闘シミュレーションがふんだんに盛り込まれたゲーム。ヒロインの好感度上昇のために一緒に戦闘やアイテム作成など、アイナを自由に動かし、恋人と遊んでいく。
ただ、『リーリウム・オスクルム』は一部のファンからはアホゲーと呼ばれている。それはなぜか。
「制作会社はなんで、学園にいる女性全員を攻略対象にしたんだろうか」
そうです、一種のアホゲーと呼ばれる所以。『リーリウム・オスクルム』に登場するメインキャラクター二十一人は勿論、学園内にいる年齢問わずの女性NPC、背景と化している隅っこの存在の女の子も口説くことができ、学園全部がアイナの愛の巣へと変貌を遂げれる。
しかも、『リーリウム・オスクルム』の攻略対象のヒロイン、重要キャラの女性陣の声を担当した声優さんたちが現役で大活躍中の人気声優さんやエロゲーのキャラに声を当てた声優さんが担当したことで、知名度が低い百合ゲーのジャンルをゲーム業界のトップに君臨させた時には、敬意を込めた”アホ神ゲー”と笑ったプレイヤーが多い。どこに情熱を注ぎ込んでいるのかわからない。
制作会社の真意を確かめる術はもうない。『リーリウム・オスクルム』と類似した世界に転生した僕、改め私にはね。
肩で息をする。
仕事している時も家にいる時も昼夜問わず、ずっと『リーリウム・オスクルム』の事だけを考えていた。それこそ、食事をしなかったり、徹夜なんて日常茶飯事。疲労がピークに達し、呆気なく死んだ前世の僕。
元の世界も楽しかったが、今の『リーリウム・オスクルム』世界の方が100億倍楽しい。転生万歳!!
あわよくば、主人公かヒロインの誰かに転生したかったが、そこまでは神は許してくれなかった。転生先はアイナール・ブルゲリアンのメイドで女性のバロン。
中身は中年男性で、見た目はメイドの女の子って、どこのTS物語だよって初めは驚きはした。
それも遠い過去となり、主人公のメイドとしての生活も悪くはないっと最近になって実感しいている。しかし、この幸せもあと僅か。学園では従者は入れない。アイナが卒業するまでの三年間は、屋敷のメイドとして給仕の仕事となっている。
本来なら......
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