Dual Sister
濁烈叫悦のアスラトシカ・ジンジャー
デュアルシスター
ついらーで不定期に投げてたやつです。
なんかこっちにあげた方がいい気がしてきたので既出分は投げておきます。
彼女は聖女ではなかった。
子供達に慈悲に溢れた笑みを向け、神へと祈る。可愛い妹が手伝ってくれるが、詰めが甘く大抵失敗してギャンギャンと涙を溢してしまう。騒がしくも楽しく過ごす広い家の日々。
孤児院と呼ぶには規模が大きく、教会と呼ぶには人員が少なかった。しかしながら近隣からのサポートの甲斐もあり、何とか生活が出来ていた。
彼女は可憐で美しく、豊満であった。妹はそれには劣るも十分に可愛らしかった。地域内で話題になり、口伝でそれが広まって大都市にまで……その結果、強引にでも連れ帰り女にしようとする貴族、犯罪組織が日々彼女を狙っていた。彼女は非力である。子供達を護ろうとはしているものの、神に祈るしか出来ない。いざとなれば自身を差し出そうと考えていた。
今宵も家に忍び込む者がいる。彼等は姉妹を纏めて傷物にしようとしていた。相手は2人で対して自分達は10人はいる。下衆な笑みを浮かべ、扉を開ける。
神像の前であどけなく幼げな寝顔で寄り添い座り込む姉妹。探す手間を省けた、これで酒池肉林の宴を開始出来
にぢゃり
姉の身体から歪な音が聞こえる。肩甲骨が飛び出て肉を纏い、腕と化し……更に増えて伸びる。6対もの腕が生えた姉が意識の無いまま身体を起こす。男は呆けたまま立ち尽くす。それでも尚、彼女の寝顔は見惚れさせる。だからこそ男は幸運であったろう。彼女の腹が裂け、俊敏な動きで触手が首を跳ね飛ばして即死させたのだから。
恐慌状態に陥った男達は出口に向けて走ろうと……1人、全身から穴を空けて倒れているのを見付けた。
神速で出口に一番近い者の上に移動した妹は、涎を垂らしつつ機構の翼を噴かす。念動力回路に作用されて男が浮かび上がる。突然の激痛に呻きながら指先を見れば、関節毎に押し潰され、赤い肉の円盤となって不気味なオブジェと化してい……手首と膝とが畳み込まれる。
地獄のようであり神罰の代行でもあるような光景を見せ付けられ、男達は逃走を計ろうにも逃げ出せないことを察した。この際仲間を蹴り飛ばしてでも自分が逃れようと同士討ちが始まる。それを黙って待っているような姉妹ではなかった。睡眠中で一言も発しないのが更なる恐怖を誘う。大木のように太くなった腕が男達を纏めて掬い取ると、茶菓子のように軽々と全身の骨を砕いた。指でころりと頭を転がすと首が千切れて丸いモノが落とされる。
妹がかつて男だった丸いモノの側方の穴へ管を突き刺した。白い管の中は見えないが、じゅぶぢゅると汚ならしく音を立てていることから推測するに半固形物を吸引しているらしい。首筋から身体へとソレを送り、撹拌し、不純物を口から吐き出させる。けほっけほっと妹の口から黒ずんだ液体と透明な油分が出てきた。
内容物が取り込まれた肉と骨のボールは姉の腹部へと呑まれていく。眼球諸とも触手で突き刺して深淵へ消える。胴体は手のひらに形成された口腔で咀嚼された。骨を予め折っていたので食べ易い。血液を溢さぬように舌で舐めとり、床に滴ってしまった分は舐めとる。
全てを嚥下した後に部屋を整え、貼っておいた防音結界を解除してから姉妹は元の場所で静かに眠る。姉の腹は子供を孕んでいるかのように大きく膨らみ、蠢いて頭骨を砕いていた。妹の胸部からは心音ではなく駆動音が、周期的に振動に偽装されて音を放っていた。
無垢なる姉妹は悪意を知らず、博愛の心で夢を見ている。
異端たる姉妹は本質を知らず、補修の為に肉を見ている。
寝惚け眼を擦り、姉妹が起きる時、一切何もそこになかった。所々に水のような汚れがあり、姉は妹が夜に催したのかとからかう。顔を赤くして憤慨する妹と清掃を始め、朝食を作ってから子供達を起こしに行く。母親代わりの2人に子供達は元気な挨拶をしていつも通りの日々が始まる。
姉は最近、寝ている間に満腹になっていることがある。妹は最近、物覚えが良くなっている気がしている。節約生活をするにあたり、それはそれで良いかと後回しにして子供達の世話を焼く。
姉妹が有名になり、様々な人間が訪れるようになったが治安は一向に悪くならない。姉妹が熱心な神の信徒であるからであろうと住民達は思い、彼女達に親切にする。
彼女は聖女ではなかった。
ヒトはソレを、神と呼ぶ。
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