第5話 君の気持ち

「隼人は私の大切な人なのに」


そう蛍さんが言うと教室は不思議な空気になった。


男子は嘆いたり女子は黄色い歓声が上がったりして結構シュールだった。


男子からは結構変な視線を向けられてしまい、僕はすぐに教室を出た。


教室を出ると、そこには佐野がいて、顔を赤くして出てきた僕を見て驚いていた。


「どうした花咲?そんなに顔赤くして」


「いやちょっと色々あって」


「もしかして、噂が本当だったりしてそれがバレたとか?」


「なんで、、そんなに察しがいいんだ」


「へ〜噂が本当だったとはね、まあ頑張れよ!」


そう言うと教室に入って行った。



僕は屋上前の階段に何故かある、長椅子に腰掛けた。


「なんで、あんなにスキンシップがすごいんだろうか?いや、僕の考えすぎか?」


僕はもう一度、今までにされたスキンシップを思い返してみた。


ある日は肩で眠られて、僕も寝ちゃったけど、今日は席をくっつくけて食べさせられたし

これは、、流石に普通じゃないよな。


考えてみると普通ではないことがすぐにわかった。


「本当に、フライヤーさんが言うみたいに気があるのか?いやならなんで、僕に気がある理由が全くわからないな」


そんなことを考えていると階段を誰かが登ってくる音がした。


「誰だろう?」


僕は階段の下を見てみると深町さんが登ってきた。


「深町さん?」


「あっいた!」


「さっきは色々とごめんね」


「いいよ、いいよそんなに気にしてないし」


「ならよかった、それともう少しで授業始まるから一緒行こう!」



僕はなんでそんなに関わってくるのか聞こうと思ったがすぐに背を向けて歩いていくので聞けなかった。


もう少し、踏み込んでみてもいいのかな?


そう思い僕は蛍さんの横に並んだ。

「ねえ、蛍さん、僕は蛍さんからしたら大切な存在ってなんなの?」


「えっ?!」


驚いた声を出されたのですぐさま僕は言い方を変える。


「いや、気になってさ、大切な存在って言っても友達として〜とかもあるし」


それを言うと少し黙って考えてしまった。


僕は答えがもらえないかなと思って正面を向くと

耳元で「私の大切はloveだからね」と囁かれた。


一瞬、思考が追いつかなかったが一旦冷静になり考えるとすごく恥ずかしく、すごく嬉しく思えた。

それからはその言葉がずっと脳裏から離れなかった。


帰りの時間になり僕は少し遅れて学校を出た。


帰っていると通学路の途中にある公園で何故か蛍さんが木に登ってオドオドしていた。


(何やってるんだろう?)


僕は気になって公園に入り蛍さんの登っている木に向かった。


「ねえ、何してるの?」


僕は声をかけるとキョロキョロと辺りを見渡していた、蛍さんは僕の方を向いてくれた。


「あっ!隼人!助けて!」


「どうしたの?木なんかに登って?」


「猫ちゃんが降りれなさそうになっていたの!」


そう言って腕に抱き抱えられている猫を見せてきた。


猫とは高いところから落ちても平気じゃなかったけ?


そう思い僕は蛍さんに声をかけた。


「ねえ、一旦猫木に戻してみて」


「えっ?!戻すの?」


「いいからやってみて」


そう言って猫を木に下ろすと猫は器用に幹を伝ってタタタタッと降りた。


降りた後は蛍さんの方を向いてにゃ〜とお礼を言ったかのように

鳴いて走り去ってしまった。


「ねえ、隼人、今度は私を助けてくれない?」


「どう助けろと?」


蛍さんが乗って木の枝は地面から僕の身長より上にありどう下そうか考えていた。


「ねえ、私が飛び降りるからなんとか隼人が受け止めてよ」


「飛び降りれるなら僕はいらないと思うけど」


「まあまあ、私が骨折するよりマシでしょ、もしかしたら、誰かに見られてて男子からの怖い眼差しが止むかもよ」


そう言いくるめられた僕は木下に立って飛び降りる蛍さんを支えることになった。


「じゃあ行くよ」


「よし、いつでもいいよ」


そう言うと何故か木の枝の上で立ち上がりそこから飛ぼうとするのでそれをなんとか静止させた。

「待て待て、なんで、今より落ちる勢いを強めようとするかな」


「いや、こっちの方が制服も汚れないしいいじゃない」


「受け止める側の気持ちも考えてくれ、そのまま行くと僕は足、、」


「足、、?」


僕は上を向いた状態が今どれだけ危険なのかを気づいてしまった。


そう、今の蛍の格好は制服、制服なのである、つまりはスカートそれをしたから見上げる。


さっきまではしゃがんでいたので見えなかったが今は立っているのである。


何を言いたいのかはもうわかるだろう、つまりはあれが見えるのである。


「蛍さん、一回しゃがもうか」


「なんで?」


「そっちの方が受けてめやすくなるから」


咄嗟にいい理由が思いつきかがめさせることに成功した。


「じゃあ、そこから木の枝に乗っている自分の体を下ろして行って」


「こうかな?」


そう言って枝の上に腰掛けるようにして座りそこから体を下ろし始めた。


「いい感じ」


しかし途中でバランスを崩してしまい落ちてしまった。


「きゃっ!」


変な声を上げ落ちてくると僕はすかさず、下に入りなんとか受け止めた。


受け止めたと言っても押しつぶされたの方が正しいのかもしれない。


一度は背中に手を当てたものの、そこから勢いが支える力よりも強く僕が背中側に倒れてしまい、蛍さんは俺の上に尻餅ついて乗る羽目になったのだから。


「いたたた、大丈夫?ってあれ?」


キョロキョロと辺りを見回している、蛍さんを気づかせようと手をしたからあげる。


「こっちこっち」


それに気づいた蛍さんはすかさず立ちあがった。


「大丈夫?それとなんかごめんなさい」


「いいのいいの、これくらい」


結構ダメージは負ってしまったが、骨折されるよりマシだ。


「それとなんであんなところ登れたの?そこが今一番の疑問なんだけど」


「私もなんか、登ろうとしてたら登れたんだよね」


「それもすごいと思うけど、なんなら飛び降りれたんじゃないの?」


「そうかもしれないけど、隼人、女の子は大切に扱うものだよ」


「はいはい」


そう言って荷物を持ってついていた汚れを払うと

蛍さんは少し話していこうと誘われてベンチに座った。


ベンチはちょうど屋根がある場所にあったので暑い日差しから涼むことができた。


「ねえねえ、隼人は女子が苦手なの?」


「いや、苦手というか、別に関わらなくても生きていけるから

 関わってこなかっただけかな」


「ふ〜ん、なんか扱いが手慣れてないな〜と思って」


「男子って大体そうじゃないの?」


「そうかもしれないけど、まあ気になっただけだよ」


「それと、今週の土曜、暇?」


「何、急に?まあ暇だけど」


「じゃあ一緒にどこか行こうよ」


「えっ?」


「別に友達だからいいでしょ」


「まあ、いいけど」


「じゃあ、今週の土曜駅で集合ね、、あっ!」


「今度はなに?」


「連絡先交換しようよ、せっかく遊びに行くんだし、それに、、」


「それに?」


「返事も聞きたいしさ」


そう恥ずかしそうに言われこっちまで恥ずかしくなってくる。


「あっああそうだな」


うちの高校は原則スマホは触ってはダメなのだが触ってはダメなので持ってきてはいるのだ。


スマホを出し連絡先を交換した。


「じゃあ、時間はこれで教えるね!じゃあまた明日!」


「また明日!」


そう言って台風のように去って行った。


「結構、天然なのか蛍さんって?」


そんなことを考えながら僕も帰路に着いた。


家に帰ると早速蛍さんから通知が来た。


(ねえ、土曜日の約束お昼からでいい?)


(いいよ、土曜は何もないから)


(そう言えば帰宅部だったっけ)


(そうだけど、時々佐野に野球部で駆り出されるくらいかな)


(へ〜、私は部活に入ってて土曜は部活の朝練が朝から入ってるから

お昼からしか行けないんだ)


(日曜じゃダメなのか)


(私は日曜は習い事があって無理だから)


(じゃあ土曜日のお昼、駅で集合ね)


(は〜い)


そう言ってここでやり取りは終わった。


僕はベッドに横になると一つ気づいたことがある


「これデートじゃない?それに、返事もそこで、、、」


デートとは男女二人が遊びに行くことである。


僕は少し嬉しくて土曜が来ないかと待ち遠しく感じた反面、返事をどうしようかな悩むのであった。











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