ティヴール家の歴史
白雪ミクズ
プロローグ
大理石の床を、わざと大きな音を鳴らしつつ歩く。買ったばかりのブーツだが、すり減ったとしてもどうでもいい。
__『歴史上の人物について、深く調べよう』?くだらない課題だ。
魔法で燃やしてしまいたい気持ちは山々だが、そんなことをして主席を逃してはまた面倒だ。親が絶対、許しはしないだろう。嗚呼、もうこの際、王族でも調べようか。俺の大嫌いな王族を。
「こんちは、リリーさん」
「あらこんにちは。みなさん、歴史の人物のことを調べているのでしょう?なら、あなたにピッタリだと思ったんです。どうですか?」
そう言って渡してきたのは、青い背表紙の本だった。かなり分厚い。
表紙には、水色の髪をした、美しい女の子が描いてあった。星と蝶が周りに舞っていて、まるで世界丸ごとに祝福されて生まれてきたかのような、そんな美しい女の子だ。
「ティヴール家?」
「ええ。流石に知っているでしょう?特にあなたなら」
この国において、王族と同じ…いや、それ以上に権力を持った一族だ。水色の髪をした、女性が代々当主を務めている名家。この名を知らないヤツなんて、生まれたばかりの赤子くらいだろう。
リリーさんに一礼をして、机の上で本を開いた。
この少女の生き様を、一言で表すならば。
「愛がなかった」
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