気だるげな先輩と真面目な後輩がSS

indo

2023/10/13 るいもスキンシップしたい

 私とスズと伊織の3人で、今日はカラオケボックスに来ていた。

 季節はまだ10月だったが、3人で学校帰りに外を歩いていると肌寒かったので、店に入ることにした。

 私がなぜか3人分のドリンクを1人取りに行くことになり(年長なんだけどな)、カラオケの個室に戻ってきたところだった。

 すると、スズと伊織がいちゃついていた。

 2人は顔を寄せ合って、1つのタブレットの画面を見ていた。ランキングなどで曲を見ているのだろう。選曲のタブレットは2つあるので、1人ずつで見ろよと思わないこともないが、まあそれはいい。

 許せないのは――伊織がスズの膝とか肩とかをべたべたさわりながら談笑しているという光景だ。


 ドン! とプラスチック製のドリンクバーのコップをテーブルに乱暴に置く。

 ジュースがテーブルに少しはねた。

「るい、お店の物なんだから大切に扱いなさいよ」

 スズがまゆをしかめた。

「だって~! 私がジュース取ってきてあげたのに、こいつがスズにベタベタしてるから!」

 私は伊織の『?』という顔の鼻先に向かって指さした。

「べつに普通じゃない?」

 あろうことはスズにもたれかかった伊織はなんともないように言うと、スズも同意した。ちょっと待って、納得できない。


「だ、だって私がさわろうするとめっちゃ嫌がるじゃん! 差別だよ。私だってもっとスズににさわりたい」

 不満をぶつけると、スズがまゆにしわをよせた。

 怒っていても、美人な顔だ……。


「るいは伊織と全然ちがうでしょ」

「ちがうってなにが?」

「さわりかたよ。伊織はなんの下心もないでしょ? でもあなたの場合、ほとんど痴漢なのよ」

「わ、私スズに痴漢と同一視されてる!?」


「なんかおそるおそる撫でてくるし、息も荒いし……。ぞくっとして嫌悪感を覚えるのよね」

「それは先輩がわるいよー」


「そ、そんなひどい……! そんなつもりないのに……」

 私が抗議の目を向けても、スズは顔を背けて、自分にベタベタと絡んでくる伊織の頭を撫でていた。


おしまい

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