灰色

lie

第1話 輪廻

人は産まれてくるとき、様々な色を持っている。

母体の血や肌の色や髪の毛など。

服を着て靴を履いて髪を変える。

様々な色に囲まれて、その生涯を終える。

人間は死に近づくにつれて灰色に近くなっていく、

髪は白く肌は色味を失っていく

そして燃えつき灰となり土に還る。


私は灰の色がとても好きだ。


男は笑っている。あるいは引きつっている。

貼り付けたような笑い方は癖のようだ。

無理矢理顔を引き伸ばしたような笑い方は、

どこか狂気を帯びている。

男は向き合ってこう言った。

「今日は寒いね。」

私は困惑した。

確かに寒い、だが寒さなど感じるはずはないのに


少しすり減らした靴

汚れた服

散らかった髪


人の見た目は人間の中身すら語ってしまう

おそらく苦労してきたのだろう

後悔してきたのだろう

取り返しのつかないものを

たくさん失ってきたんだろう。

男は笑っているどうしようもなく笑っている。

私は少し怖くなってきた。

「君はどうして笑っているんだい?」

私は聞いた。

男はこう言った

「さあね、僕には分からない」


そこで目が覚めた意味のわからない夢

ただ今日の出来事を整理するために頭が作る妄想

少しずつ頭がハッキリしてくる。

時計を見た 午前 4:30  まだ起きるには早いが

あまり寝る気にはなれなかった。


ときどき私は男を燃やす夢を見る。

決まって顔のない男を燃やす。

骨になり灰になっているはずなのに

表情がある

決まって笑っている。

私には殺人衝動があるわけでも

死を見たい訳でもない


だがどうしようもなくその灰色が好きだ


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