第12話:悠生君のダチ。

その日も1日なにも起きないで終わるのかなって思っていた。

でも、いきなり部屋のドアを叩く音がして


「悠生いる?」


「あ、吉岡?」


「ちょ、ちょっと待て・・・って言ってもな・・・」

「ワインは隠せないし・・・とりあえず、ここは彼女ってことで通そう」


ってアタフタしてるうちに悠生君のダチの吉岡君が自分の部屋みたいに

ずけずけ入ってきた。

ま、それは普段から吉岡君の普通の行動だったから・・・。


「悠生、借りてた漫画返しにきたんだけど・・・」


吉岡君が六畳の部屋に入ってくると、立ってうろうろしてる悠生君とヘッドホン

してノリノリになってる女が目に入った。


「誰?」

「悠生・・・誰?この人・・・てかなにやってんだ?・・・」


吉岡君は背中を向けて曲を聴いてるワインを指差してもう一度言った。


「だから、だれ?」

「・・・女?だよな」

「おまえ、ここ女ダメなんだろ?」

「なのに、なんか連れ込んじゃってるし・・・」

「どこから見ても男には見えないわな・・・もしかしてニューハーフとか?」


「違うわ・・・れっきとした女だよ」

「この子・・・俺の彼女・・・」


「彼女?」


「あれ?、おまえアレルギー克服したのか?」


「ま、そういうところだな、あはは」


「・・・嘘つけ」


「お〜い悠生の彼女?」


吉岡君は自分の声が聞こえるようにワインの近くに行ってもう一度同じ

ことを言った。


「お〜い、ゆうせいのか〜の〜じょ〜」


吉岡君に呼ばれたワインはヘッドホンをはずして振り向いた。


「はい?」


「へ〜超美人じゃん・・・しかも外人だし」

「おまえ、こんな綺麗な子、どこで拾って来たんだよ」


「捨て犬みたいに言うな」

「街でナンパしたんだよ」


「へ?、おまえがナンパ?、ありえない話・・・おまえが?」

「ナンパ?・・・」

「ってか、この子耳、尖ってないか?」


「突然変異だろ・・・」


「へ〜めちゃカッコイイじゃん」


「ねえ、お兄さん、誰?」


「悠生君のお友達・・・俺、吉岡って人・・・よろしくね」


「ともだち?」


「そうだよ悠生の彼女ちゃん」


「お兄さんでもいいわ・・・セックスしない?、私と」


「お〜っといきなりそれ?」


「この子の口癖みたいなもんだから気にしなくていいから」


「あのさ、おまえ街でナンパなんて言ったけど・・・ほんとは違うだろ?」

「おまえはそう言うタイプの男じゃないし女性アレルギーが女に声かける

わけないもんな・・・」


「だってよ・・・本当にナンパしたんだし・・・」


「本当のこと言え・・・」


「・・・たぶん言っても信じないと思うぜ」


悠生君は、しかたなくワインが現れた経緯を吉岡君に話して聞かせた。


「ほう〜なるほど・・・でもまだナンパのほうが信ぴょう性ありそう」


「信じてないだろ、おまえ」

「そうだよな、信じないよなそんな馬鹿げた話・・・」


「悠生、その話をすぐに信じろってほうが難しいだろ?」

「なんかさ、証拠でもあったら信じてやってもいいけど」

「俺もさ、面白い話とか変わった話、嫌いじゃないけどな・・・」


「証拠なんてないさ、唯一はこの子の尖った耳くらいだよ」

「あとは人間と同じ・・・あの耳・・・あれだけは本物だからな」


「あ〜耳ね・・・たしかにな、つけ耳じゃなきゃな」


「なんでそんな手間のかかること俺がするんだよ」

「そんなことしたって意味ないだろ」


「確かにな・・・分かった・・・信じてやるよ」

「まだ信じられないけどな・・・」


「まあいいわ・・・おまえが信じようが信じまいがこれが現実なんだからさ」


「ねえ、ねえ、お兄さん私とセックスしましょうよ」


「まだ言ってるぞ・・・この子」

「おまえが彼氏なのに、よその男誘惑して貞操観念のない子だな・・・」


つづく。


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