第10話:女性もののパンツ。
悠生君は、ワインの朝ごはんにカップラーメンを作ってやって、
当面必要なものをスーパーに買いにでかけた。
悠生君のアパートから歩いてすぐの近所にスーパーが一軒ある。
たいがいの雑貨はそのスーパーに揃っていた。
サイズもよく分からないままワインの服、タオルにバスタオル、歯ブラシに
コップ・・・
銭湯へ行くための洗面器、シャンプー&リンス、ヘアブラシ、 トイレット
ペーパーもティッシュも余分に・・・。
「生理用品だっているだろ?、生理がないなんてことないよな」
「なかったりして・・・精霊だからって言いそうだな・・・」
「あ〜あ、バイト代が減っていくな〜」
「問題はパンツだな・・・女の子のパンツ・・・」
「買うのか、俺が・・・」
これにはさすがに悠生君も抵抗があった。
ワインが自分で買えないんだから俺が買うしかないよなって思った。
悠生君は女性用のパンツが山積みになってる百均コーナーを犬みたいに
何回もぐるぐる回っていた。
警備員の人が見たら万引きと間違われたかもしれない。
他のものは難なく買ったが・・・パンツは・・・。
「買えるわけないじゃん・・・」
「男が女もののパンツなんか物色してたら絶対変質者だって思われるよ 」
「かと言ってな〜、ノーパンじゃマズいだろうし・・・」
悠生君はベランダに干してある女性のパンツを盗むヤツの気持ちがよく分かった。
(あれなら、嫌な思いしないでタダで手に入るもんな・・・)
(しかも洗ってるとはいえ履いたヤツだし・・・)
ほ〜そう言うのがいのか悠生君は・・・。
(新品のパンツより一度でも履いたパンツとでは価値が違うし・・・
新品のパンツは履いたパンツには、エロいと言う点で到底太刀打ち
できないよな・・・)
(そういう意味では女性のパンツは男のスケベ心をそそる最強のアイテムの
ひとつだよ・・・それだけにいざ買うとなると抵抗を感じるな〜)
パンツのコーナーを目の前にして余計なことを妄想する悠生君だった。
まあ、真面目だった悠生君には干してあるパンツを盗む勇気はなかった
わけで・・・。
(たった一枚のパンツ盗んで捕まったら割に合わないしな・・・)
悠生君は、もうかれこれ30分はパンツのコーナーを回ってた。
そんなことを、いつまでも続けていても ラチがあかないと思った悠生君は
覚悟を決めて女性用のパンツを何着か、ろくに見もしないで掴み取って、
買い物かごの中の他の品物の下に潜らせた。
そんなことしたって意味ないのに・・・。
最後の関門・・・レジのおばちゃんの前で買ったものをさらけ出さないといけない。
自動精算機があったらよかったのにって悠生君は思った。
「まったく、冷や汗もんだよ」
案の定レジのおばさんに、ジト目で見られた。
パンツを買わなきゃいけない理由をレジのおばさんに言って納得して
もらいたかった悠生君だった。
「俺、なにやってんだろ・・・なんで女モノのパンツなんか買わなきゃ
いけないんだよ 」
「全部、ワインのせいだよな」
「だけど、パンツが買えたらもうどんなものでもなんでも買えるな」
悠生君はなんだか障害をクリアしたことがホコリに思えてきた。
だけどほんとに迷惑な話だと思った・・・。
悠生君はワイン自体は嫌いじゃなかった。
たぶん悠生君が女性アレルギーじゃなかったら同居じゃなくてとっくに
同棲になってただろう。
「お、そうだ・・・」
悠生君はなにを思ったのか、そのまま薬局へ寄ってコンドームを一個買った。
ただの避妊用具だと割り切ってはいたが、ちょっと恥ずかしい気もしたが、
女もののパンツ買ったし、コンドームくらいどってことなかった。
何種類かあって、どれがいいのか分からなかったから一番薄いというヤツを買った。
万が一、もしパンとセックスするようなことになったら必要になるだろう
って思ったからだが・・・
「妊娠しちゃうと困るし・・・」
どこまでも真面目な考えの悠生君。
普通は律儀にそんなことを考える男は少ないと思うんだけど・・・。
自己中男が多いから・・・。
世の中やっちゃった、できちゃったって男と女けっこう多いですからね。
セックスがオープンになったぶん、そういうことも増えて来るんだね。
悠生君はコンドームなんか買ってるより、その前に女性アレルギーを
なんとかしろって話だよ。
つづく。
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