第96話 ドワーフ達がやってきた
聖女達が王都に戻って来た三日後、ジャンヌとドワーフの一団が到着した。
門番から王城へ、王城から第三騎士団に連絡が来るだろうが、その時俺はすでに門へと向かっていた。
なぜならジェスがジャンヌ達の到着を教えてくれたからだ。
俺達が王都に戻った時にも使った門に到着すると、門番をしていた第二の騎士があからさまにホッとしていた。
ドワーフの集団と
「おお、ジュスタン。迎えに来てくれたか、嬉しく思うぞ。ジェスも息災のようでなにより」
俺とジェスを見つけると、ジャンヌはニッコリと微笑んだ。
その美しい微笑みに門番の騎士達は目を奪われている。
「ああ、よく来てくれたな。恐らくもう少ししたら王城から迎えの馬車が来るはずだから、一度皆で陛下に謁見してもらう事になるだろう。その方が後々面倒な事にならないはずだから、しばらく我慢してくれるか?」
「なに、
「助かる。とりあえずの皆の住まいは貴族街にある王家所有の屋敷に滞在して、後に俺達第三騎士団の敷地内にもう一つ宿舎を建てるという事になっているが、それでかまわないか?」
「
「ああ、
ジャンヌに話を振られると、ドワーフの長は豪快に笑った。
「専用の工房はすぐには無理だが、建設してもらえるのは決まっているから安心してくれ。できれば未熟な職人達を指導してくれると助かる。一応所属してもらう工房にはボスコがいるから、何かわからない事はボスコに聞いてくれればいい。要望があればボスコに言えばこっちにも報告が入るからな」
「ふふん、あの小僧か。どれだけ成長しているか、会うのが楽しみだわい」
そうこうしている内に馬車を引き連れた第一騎士団がやってきた。
何気にエルネストも一緒にいる。
「ヴァンディエール騎士団長、第三騎士団にいないと思ったら、もう来ていたとは。従魔契約しているからわかったのか?」
第一騎士団は一斉に下馬し、エルネストが俺に話しかけてきた。
「ジェスが母親の気配を察知したからですよ。紹介します、こちらがジェスの母親のジャンヌ、そしてドワーフの長の……そういえば長の名前を聞いてなかったな」
「儂の名前か? そういえば長になってから誰も名を呼ばなくなっていたな。儂の名前はバシルだ。この小僧も騎士のようだが、誰だ?」
明らかに一団の中で貫録のあるガンズビュール騎士団長が一緒にいるのに、年若いエルネストが代表して話しているのが不思議だったのか、長は値踏みするような目をエルネストに向けた。
「私はこの国の王太子の……第一王子のエルネストだ。王城よりドラゴンのジャンヌ殿とドワーフの方々を迎えに来た。よく来てくれた、王族として歓迎する」
エルネストが自分の事を王太子から第一王子と言い直した。
これはもしかして王太子の座を
「ほほぅ、王族が出迎えとな! 何やら重要人物にでもなった気分だのう、わははは」
バシルが突き出た腹を揺らして笑ったが、エルネストはまだ緊張しているようだ。
どのくらいの立ち位置でいればいいのか迷っているのかもしれない。
協力はしてほしいが、あまりへりくだった態度でドワーフが調子に乗っても困るだろうしな。
「騎士にとってドワーフの打つ剣は宝みたいなものだからな。エルネスト様は剣の腕が立つから長が打つ価値のある方だぞ」
これは本当の事だ、実際王立学院時代から剣の腕だけは認めていたしな。
だがまぁ、俺の方が強かったからなめた態度を取っていたというのはある。
そして当人は俺に褒められると思っていなかったのか、驚いたような、嬉しそうな顔をしていた。
王都に到着して助けた時から妙に慕われている気がする。
あの時よほど怖い思いをしたからかもしれないな。
「ジュスタンが認めるほどならそうなのだろう。とにかく今は一度城に行かねばなるまい?」
「ああ、あの馬車に乗って行けるはず……。ですよね? エルネスト様」
「あ、ああ、そうだ。王城まで案内するので乗っていただこう」
これまで王太子と呼んでいたのに、名前で呼ばれたから戸惑ったようだ。
だが自分から王太子と名乗らなかったのであれば、こちらとしては合わせるくらいの事はする。
皆が馬車に乗り込み、エルネストの合図で出発した。
「ジェスはジャンヌと一緒に馬車に乗らなくてよかったのか?」
「うん、ボクはジュスタンやエレノアと一緒の方がいいもん! ね、エレノア」
ジェスの言葉にエレノアが当然と言わんばかりにブルルと鼻息で答えた。
仲のいい二人(?)の様子にほっこりしつつ、第一騎士団の後を追いかけた。
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